PhRMA・ジャクソン日本代表 患者がすべての医療情報にアクセスできる環境を
公開日時 2019/02/06 03:53
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のエイミー・ジャクソン日本代表はこのほど、本誌の取材に応じ、「患者が自身の治療について、賢い意思決定をするためには情報が必要だ。そのためにはすべての情報が患者に提供されていることが大前提だ」と述べ、患者に対する医療用医薬品の広告規制を緩和するよう訴えた。PhRMAは、政府の規制改革推進会議医療・介護ワーキングのヒアリングで、「患者が治療するための情報提供が制限されている。規制が時代に即さなくなっている」と主張していた。一方で、米国版DTCの日本への導入を想定しているかとの記者の質問に対しては明確に否定した。
国内では、一般消費者や患者に向けた医療用医薬品の情報提供は、医薬品医療機器等法(薬機法)67条や適正広告基準で禁止されている。ただ、行政側が事前に確認した情報をPMDAのホームページに掲載できるほか、学会での個別企業の展示ブースにおいて患者向けの情報提供を認めるなどの対策も取られている。
◎販売情報提供活動GLの未承認・適応外薬について「明確な定義を要望」
ジャクソン日本代表は、「もちろん、製薬企業として法規制全てを遵守することを目指している」としたうえで、「国民、患者一人一人が医療について理解することを促進するよう動いている」と述べた。そのうえで、4月施行の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(GL)」の内容に触れ、未承認・適応外薬の情報提供など、依然として残る“グレーゾーン”に懸念を示し、「明確に定義してほしい」と強調した。2018年度中をめどに、厚労省はQ&Aの策定を進めているところだが、ジャクソン日本代表は、直前まで製薬業界が認識できない制度が導入されたことはなかったとして、早急な対応を求めた。
そのうえで、GLの施行で患者に伝わる医療情報が少なくなることへの懸念も示した。ジャクソン日本代表は、「GLや現行の規制は、患者自身が医療について理解を深め、情報をベースとした治療の意思決定を自ら行うことができるようにするという方向性に逆行している」と強調した。政府の規制改革推進会議の場でも、PhRMAは、「プロモーション活動の是正を促進することを重視するあまり、医薬品を適正に使用し、患者にとってより質の高い治療を提供することが阻害される懸念がある」と牽制していた。
◎MSLの情報提供活動規制強化に懸念
PhRMA広報委員会の三井貴子副委員長は自身が規制改革推進会議に出席した立場から、「MSLを含め、情報提供ができなくなることに危惧を覚えた」との印象を語った。さらに「外資系企業ではMSLの役割はきちんと実行されている」と述べたうえで、「医師が薬剤を処方するための重要な情報が行き届かないことは問題だ」との認識を表明した。ただ、国内ではメディカルの絡む不正事案も複数指摘されているところ。三井副委員長は「一部うまくいっていないからと全部取り締まってしまえば、情報提供の流れがうまくいかない」と述べた。
◎適正な広告でルール化を
PhRMAは政府の規制改革推進会議の場で、「広告(宣伝)」と「適正な情報提供」の定義を明確にし、法改正を行うことを求めている。三井副委員長は、「GLでは、情報提供=広告が同義になっている。適正な情報提供は広告と違う。適正な広告は製薬会社としても提供すべきだ」と話した。ただ、広告と適正な情報提供の線引きについては、「明確な線引きは民間の製薬企業がやらなければならないものではなく、政府がルールを作る必要がある」と話すにとどめ、PhRMAとしての明確な答えは得られなかった。
ジャクソン日本代表は、「PhRMA会員企業は、世界で事業展開するどこの国であれ、倫理的な行動をとり、法規制を遵守している。GLが決まれば守っていきたい」とも述べた。