厚労省 aHUS治療薬・ソリリスの資材でアレクシオンに口頭指導 調査は継続
公開日時 2018/10/09 03:52
厚生労働省医薬・生活衛生局は10月5日までに、aHUS治療薬・ソリリス(一般名:エクリズマブ)の情報提供で使用する資材について、アレクシオンファーマ合同会社に対し、口頭で指導を行った。二次性TMAをソリリスの適応と誤認させる情報提供資材の使用をやめるよう注意したもの。ただ、同局はアレクシオンファーマの情報提供について、さらに専門医の意見を交え、安全性の観点から引き続き調査を進める方針。アレクシオンファーマ広報部は本誌取材に対し、「誤解を招く可能性のあるものは自主的に使用を中止している」と説明。「厚労省とは現在協議中。結論が明らかになり次第、適切に対処する予定でいる」とコメントした。
本誌はソリリスをめぐり、アレクシオンファーマが適応外使用を助長させるプロモーション活動を行い、結果として死亡例が出た可能性を指摘してきた(関連記事①、②、③、④)。
本誌取材によると、資材発注サイトからMRが注文できなくなった資材は、▽補体異常と腎疾患―非典型溶血性尿毒症症候群」(資材番号:HUS-JKC(1)-1707、2017年7月作成)、▽「Treatment of aHUS – state of the art」(同:HUS-JSN-1707、17年8月作成)、▽「aHUS患者さんは、補体制御異常によるTMAにより、突発性かつ進行性の臓器不全や早期死亡のリスクを有しています」(HUS-VAB1710、17年10月改訂)、▽「その症例はTTPですか?それともaHUSですか?」(HUS016-1805、18年5月作成)-の少なくとも4種類。
このほか、アレクシオンファーマの運営する疾患サイト「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)疾患情報サイト」からは、学会のランチョンセミナーやイブニングシンポジウムなどの記録集(PDF版)がすべて削除されていた。
◎診療ガイド策定後の2016年から海外論文の別刷り資材も配付 二次性TMA表記無し
aHUS(非典型溶結性尿毒症症候群)をめぐっては2013年の診断基準策定後、15年に日本腎臓学会らが診療ガイドを策定。aHUSの定義自体が見直され、補体系の異常な活性化を伴うものにのみ限定された経緯がある。診療ガイドでは、自己免疫疾患や臓器移植後のTMAなどについては原疾患の治療が優先とされており、「二次性TMAに対する使用は現時点では推奨されない」と明記されている。診療ガイド改定後の18年4月にも、日本腎臓学会と日本血液学会が、aHUSに限らずソリリス投与に際し、髄膜炎菌感染症のリスクがあることを注意喚起。電子カルテ上で注意喚起するなど院内の体制整備を求めていた。
同社はその後も、Clinical Advances in hematology and oncologyに16年11月に掲載された論文「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS):正確な診断に不可欠な要素」(英語版資材コード:ECU-REP7-1612、16年12月作成)と、その日本語翻訳版(日本語版資材コード:ECU-REP8-1703、17年3月作成)を作成。ともに「二次性TMA」の表記がなく、「本論文にはAlexion Pharmaceuticals,Inc.の財政的支援を受けている。本論文は著者らの意見および見解を反映したものであり、Alexionより最小限の編集サポートを得て作成した。著者は全員Alexionより謝礼を受け取っている」(日本語版より)ことが明記されている。
この論文を社内では“ローレンス論文”と呼び、「最新の情報」として、医療現場にこうした情報を提供してきた。資材には、「上記記載にあるaHUSの定義は本邦と異なるため、国内のaHUS診療ガイド2015等を参照してください」と記載している。今回使用をやめた資材には、国内の診療ガイドと、論文が併記されているものも多く含まれており、厚労省医薬・生活衛生局はこうした情報提供のあり方を問題視した。
◎社員への説明は無し、MRへの資材回収は徹底されず
一方、10月5日現在で、社員に対し厚労省から口頭指導を受けたことの徹底は行われておらず、MR(MCCと呼称)の手持ち資材の回収は行われていない。“ローレンス論文”も10月5日時点で、まだ資材として活用されている。さらにMRのプロモーション活動について、情報提供活動の内容を改める指示や伝達はなく、従来と同様のプロモーション活動を推奨しているという。
◎アレクシオンファーマ広報部が本誌に寄せたコメント(以下の通り)
厚労省とは現在、協議中。結論が明らかになり次第、適切に対処する予定でいる。資材については誤解を招く可能性のあるものは自主的に使用を中止している。使用を中止した資材の詳細については適切なタイミングがきたらお伝えさせていただく。
私どもとしてはaHUS診療ガイドを含め、日本小児科学会及び日本腎臓学会の診断基準などを参考に非典型性溶血性尿毒症症候群と診断された患者に適正にソリリスが使用されるよう情報提供活動を行っている。売上目標とインセンティブは、社内ルールに則って、適切に運営している。社内情報となるので公表を差し控えさせていただく。