サントリー 生活習慣病の重症化予防や高齢家族にオンライン活用 ビッグデータで生産性向上
公開日時 2018/07/05 03:51
サントリーホールディングスは7月4日、タブレット端末などを活用し、糖尿病など生活習慣病の重症化予防に向けた保健指導と、遠隔地に住む高齢家族へのオンライン診療を10月からスタートさせると発表した。インテグリティ・ヘルスケア社のオンライン診療システム「YaDoc」を活用する。従業員の健康増進に加え、高齢家族を抱える従業員の介護などの負担軽減につなげたい考え。ビッグデータや人工知能(AI)の活用を通じ、糖尿病の重症化進展を抑制するなど、未病・予防に取り組む。同社の新浪剛史代表取締役社長は、「健康経営は、働き方改革と共に重要な課題だ」と表明。「技術革新を活用した健康経営に積極的に取り組み、魅力的な会社となるよう努めたい」と述べ、保険者機能の強化で生産性向上を実現する姿勢を強調した。
今回スタートする取り組みは、①40歳未満の生活習慣病予備群の社員へのオンライン保健指導、②社員と離れて住む高齢家族へのタブレット端末を活用したオンライン診療―からなる。
高齢家族へのオンライン診療は、社内アンケートから介護と仕事との両立や、遠距離での介護に不安を感じている社員がいることが浮かび上がってきたことを踏まえて導入に踏み切った。実際、介護を理由に離職する社員も年間10人程度いるという。対象は、遠隔地に住み、介護が必要など通院の負担が大きい社員・配偶者の両親(後期高齢者)。福岡市・名古屋市から導入を開始し、東京などへと順次拡大する考えだ。同社は2016年から健康経営に取り組んでおり、すでにウォーキングや健康合宿、セミナーなどに取り組んでおり、この第二弾に位置付けている。
◎労働性生産人口の増加で経済の好循環を
6月15日に閣議決定された政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)では、AIやICT、ロボットなどの技術革新によりSociety5.0社会の実現、生産性革命が盛り込まれている。経済財政諮問会議の民間議員も務める新浪社長は、骨太方針を踏まえ、「民間企業としてできることをやりたい」と述べた。特に、生活習慣病予備群の社員への保健指導などを通じて蓄積されるデータをAIで解析することで、保健指導が個別化できることに期待感も示した。新浪社長は、「早期に疾病になる可能性を撲滅していく。重症化予防を通じ、労働生産人口を増やすことがマクロ経済的には重要だ」との考えを表明。健康な社員を増やすことで、日本経済の活性化、さらには消費の活性化へと経済の好循環につながるとの見方も示した。さらに蓄積したデータがサプリメントの開発などに役立つ可能性も指摘。「データを活用しながら、どんな商品をつくって提供することが社会に役立つかにもつなげていきたい」と意欲を見せた。
インテグリティ・ヘルスケアの武藤真祐代表取締役会長は、今回対象となる生活習慣病予備群であるにもかかわらず危機意識の少ない未受診者や、介助がないと通院ができない高齢者などは、「多くの企業や自治体が直面している課題だ」と指摘した。そのうえで、「誰もが医療とつながり、安心して暮らせる社会をサントリーと実現していきたい」と述べた。