日本リリー・ジョンソン社長 18年以降も「強力に業績を上げていくと確信」 MR軸にデジタル活用で情報活動効率化
公開日時 2018/03/23 03:51
日本イーライリリーのパトリック・ジョンソン社長は3月22日、東京都内で記者会見し、同社が達成してきた継続的な成長への2018年度薬価制度抜本改革の影響について、「懸念することはあるが、私どもは強力に業績を上げていくだろうと確信している」と強調した。がん、疼痛、糖尿病、神経変性疾患、自己免疫疾患の重点5領域を中心に現在パイプラインには、17年9月に進行乳がんを対象に承認申請したアベマシクリブ(経口剤)に加え、フェーズ3に13の開発品あることを示し、今後の成長に自信を見せた。新製品の情報提供におけるMRの役割は重要だとし、約1800人のMR体制について将来的にも維持することを表明、「MRを軸にデジタルコミュニケーションツールを活用」することにより、情報活動の効率化を進める姿勢を示した。
同社日本法人の2017年業績は、うつや疼痛に用いるSNRIサインバルタ、胃がんなどの治療薬サイラムザ、糖尿病に用いるGLP-1受容体作動薬トルリシティ、SGLT2阻害薬ジャディアンスが二桁以上の大幅な伸び率になるなど主力品の成長が寄与し、決算ベースと販売等の提携企業の売上等を合わせた売上高は2601億円、16年と比べて7.0%増だった。この日の配布資料では、2000年以降増収傾向にある。ジョンソン社長は、重点領域それぞれに主力新薬があり、実施比率が約8割に上る世界同時開発により継続的に各重点領域で新薬を上市できていることが奏功していると説明した。
この成長戦略に対する薬価制度抜本改革の影響についてジョンソン社長は、「米イーライリリーは非常に強力に日本にコミットしている。米国以外の最大の市場だからだ。今後も継続して新製品の(上市に向け)世界同時開発を行う。2018年度の薬価制度改革により、革新性ある製品を出していくことに懸念することはあるが、私どもは強力に業績を上げていくだろうと確信している」と述べた。現在の開発投資方針は、長期的なスパンで過去に意思決定されたものだとして「近々に影響することはない」としたが、国には対話を通じてイノベーションの推進策を求めて働きかけを行っていくとした。
今後の成長の裏付けとなるパイプラインに挙げた17年9月に承認申請したアベマシクリブ(カプセル剤)は、細胞周期を停止に抗腫瘍効果を発揮するCDK4/6阻害剤。ホルモン受容体陽性の進行乳がん患者を対象にしている。現在、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がんの適応を持つサイラムザ(一般名:ラムシルマブ遺伝子組換え、皮下注)は、肝細胞がん、膀胱がん、非小細胞肺がん(一次治療)がフェーズ3。ほかフェーズ3にある、片頭痛発作の発生抑制を期待するgalcanezumab(皮下注)、超速効型のインスリン製剤がある。ソラネズマブなどアルツハイマー病薬を目指しフェーズ3にある開発品について同席し吉川彰一研究開発本部長は「なかなか簡単ではないことは重々承知しているが、コミットメントが変わるものではない」とだけ述べた。
MR数は維持
適応追加を含め新製品の上市が今後も続くことが見込まれる中での情報活動についてジョンソン社長は、「MRを軸にデジタルコミュニケーションツールを活用」するとし、「個別ニーズに合わせて適切なタイミングで継続的に提供する」ことを基本方針に展開していると説明した。
デジタルツールによる提供に同意する医師ら医療従事者数は増えてきているといい、医師らが必要とする多くの情報を迅速に提供できるようになり、情報活動の効率化が図られてきていることを強調した。それにより早期の段階で医師のインサイトなどを得られるようになり、MRが活動に生かせることから「(今後も情報活動において)MRが中心的な役割を果たしていくことは変わらない」と述べた。継続的な新製品が上市されれば「情報提供が必要であり、MRが引き続き提供させていくことになる」と話した。MR数も「将来的にこのサイズを保っていく」との姿勢を示した。
【2017年 主な製品の売上高(薬価ベース:IQVIA)】
サインバルタ (抗うつ薬、疼痛薬)541億円(29.96%増、塩野義製薬の売上含む)
フォルテオ(骨粗鬆症治療薬)493億円(0.83%増)
サイラムザ(抗がん剤)439億円(52.10%増)
トラゼンタ(糖尿病治療薬)406億円(5.50%増)
アリムタ(抗がん剤)342億円(8.16%減)
ジプレキサ(抗精神病薬)282億円(40.78%減)
ストラテラ(AD/HD治療薬)270億円(17.97%増)
インスリン(糖尿病治療薬)159億円(4.83%減)
トルリシティ(糖尿病治療薬)140億円(217.72%増)
ザルティア(排尿障害改善薬)115億円(28.00%増)
ジャディアンス(糖尿病治療薬)110億円(166.94%増)
エビスタ(骨粗鬆症治療薬)97億円(25.84%減)
ヒューマトロープ(糖尿病治療薬)91億円(3.23%減)
インスリングラルギンBS注リリー(糖尿病治療薬)40億円(26.82%増)
ジェムザール(抗がん剤)29億円(18.24%減)
トルツ(乾癬治療薬)13億円(4744.81%増)
オルミエント(関節リウマチ薬)1.26億円(-)