製薬協・畑中会長 革新的技術とデジタライゼーション駆使で革新的新薬を創出
公開日時 2018/01/17 03:52
日本製薬工業協会(製薬協)の畑中好彦会長は1月16日、都内で開かれた定例記者会見に臨み、昨年末に厚労省が公表した「医薬品産業強化総合戦略」(改訂版)を踏まえ、製薬産業として新たな創薬のベースとなるAIなどのIT医術などを加味したデジタライゼーションを積極的に推進する姿勢を表明した。政府は、リアルワールドデータ(RWD)の利活用などの緊急政策パッケージ“日本創薬力強化プラン”を策定したが、「支援策を最大限に活用して事業に取り組み、次世代創薬に全力で取り組んでいきたい」と述べた。一方で、薬価制度抜本改革については、「医療費抑制策を薬価制度に関する財源に依存した結果、イノベーションを著しく阻害する」と述べ、改めて反発した。
◎新薬の価値と負担をいかにとらえるか―世界的な課題に
厚労省がまとめた医薬品産業強化総合戦略では、人工知能(AI)を用いてリアルワールドデータ(RWD)を解析するなどして、革新的新薬を生み出す次世代の産業像を描いた。実際、官民対話での議論を踏まえ、RWDの利活用などを推進する条件付き早期承認制度を早期に制度化するなど、イノベーション創出に向けた環境整備も進めている。
製薬協がまとめた「製薬協産業ビジョン2025」では、次世代の製薬産業の姿として、先進創薬で次世代医療を牽引し、革新的新薬を届ける姿を打ち出している。畑中会長は、ビジョンの実現に向けて、「それぞれの企業が実行していくかというところのフェーズにある」との見方を示した。具体的には、新たな創薬のベースとなるモダリティと、ITやAI、ビッグデータなどのデジタライゼーションの2つを駆使して革新的新薬を創出するとの考えを示した。一方で、「作り上げた新薬の価値と負担をどうしていくか。これが、製薬協だけではなく、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)を含めて全世界の製薬企業、ベンチャーが考えなければいけないことだと考えている」と述べ、医療保険とイノベーションとの両立が製薬企業にとって世界的に最大の課題との考えを示した。
◎業界提案は研究開発税制、環境整備など総合的に 薬価は運用面での議論に注力
18年度薬価制度改革では、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の抜本的な見直しなどが実行に移されることになる。新薬創出等加算は、12年度の試行的導入以降、業界側が制度化を要望し続けてきたが、今回の見直しで対象範囲が限定されることになる。業界側は一貫して、「特許期間中の薬価を維持し、一方で長期収載品に頼る経営から脱却する」ことを訴えてきた。そのため、18年度改定の議論の過程でも、「新薬創出等加算は最低でも維持、品目を増やすことを目指してきた」と畑中会長は述べた。
新薬創出等加算の範囲を決める企業要件・品目要件は、業界の反発を受けて議論の過程で一部緩和されたが、「決して納得できるものではない」と強調。今後詳細を詰めることになる運用面での議論に積極的に参画する姿勢を鮮明にした。類似薬がなく、製造経費などを積み上げて算出する”原価計算方式”について言及し、「イノベーションを正確に反映しているものかどうか。我々としても考える余地がある。新たな算定方式を提案していきたい」と述べた。
今後、業界サイドからは、薬価制度改革についての提案に加え、医薬品医療機器等法(薬機法)改正を視野に入れた研究開発の環境整備や、研究開発税制など投資に関連する環境整備など、総合的に提案していく姿勢を強調。「様々な形で議論していく。全体の中で薬価の位置づけを考えていきたい」と述べた。