自民党の「社会保障制度に関する特命委員会　医療・介護ＰＴ合同会議」が11月28日開かれ、新たに制度化を目指す「革新的新薬創出等促進制度」について、現行の新薬創出等加算に照らすと、該当品目数のうち4割が脱落することが厚労省より報告された。自民党の古川俊治医療PT事務局長が、会議後に記者団に明らかにした。厚労省がまとめた薬価制度の抜本改革の骨子案によると、新薬創出加算の品目・企業要件の絞り込み、長期収載品の引き下げ、薬価の毎年改定の実施と、先発メーカーの経営には大きな打撃を与えることが想定されており、自民党議員からは企業経営への影響と将来の予見性を危惧する声が多数あがった。なお、きょう11月29日の中医協薬価専門部会で製薬業界側から薬価制度抜本改革の骨子案について、意見開陳が行われる。

厚労省が提案する革新的新薬創出等促進制度は、革新性・有用性に着目した品目に絞る。その上で、企業要件として、国内試験の実施や新薬収載実績などの実績要件をポイント化し、３区分。それに応じた薬価とする方針を盛り込んだ。現行の新薬創出等加算では、事実上すべての品目が新薬創出等加算品目に該当することが指摘されており、企業要件を厳格化した。

2016年度の新薬創出加算の対象品目は820品目、加算額は1060億円にのぼる。導入が検討されている新制度では、品目が要件を満たしても、価格を維持できるのは、革新的新薬開発に取り組む上位５％の製薬企業のみ。残りの95％の製薬企業は、薬価の引き下げを受けることになる。品目以上に企業が受ける打撃が大きく、さらに他の企業を指標とした相対的な評価となることから、薬価制度の予見可能性が損なわれることへの懸念も自民党議員からは聞かれた。

また、ドラッグ・ラグの再燃を検討する声も自民党議員からはあがったが、開発要請に適切に対応しない企業は除外し、開発公募品に取り組む企業は加算の対象としているとして、ドラッグ・ラグの再燃には当たらないと説明した。

【本誌分析・革新的新薬創出等促進制度　対象品4割脱落も内資、外資で痛み分け】

本誌が各社のデータを分析したところ、新制度による企業要件は、結果的に見ると内資、外資の痛み分けとなっていることがわかった。指標は、①革新的新薬創出（国内試験、新薬収載実績）、②ドラッグ・ラグ対策（開発公募品）、③世界に先駆けた新薬の開発―の３項目をポイント化したもの。その結果、国内試験の実施数や新薬収載実績などは外資系企業が上位に並ぶ一方で、開発公募品や先駆け審査指定制度の該当品目では、第一三共やアステラスをはじめ、内資系企業が顔を揃えることが分かった。内資、外資問わず、国内での研究開発は促進される見通し。

そのほか、後発品をめぐっては、初収載の薬価が現行の0.5掛けを維持する方針だが、さらなる引き下げを求める声がきょうの会合で議員からあがった。これに対して厚労省側は、長期収載品の引き下げなど、様々な環境変化がある中で現行制度を維持することへの理解を求めた。


◎医薬品強化総合戦略　新たに“流通改善”の一層の対応を盛り込む

厚労省は今回の改革の主旨について、「長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造」に転換する目的で、薬価制度の抜本改革にあわせ、「医薬品強化総合戦略」の見直しを進めていることを改めて報告した。

この日、厚労省が報告した総合戦略の柱は、①日本発のシーズが生まれる研究開発環境の改善、②薬事規制改革等を通じたコスト低減と効率性向上、③医薬品の生産性向上（バイオシミラーを含む）と製造インフラの整備、④適正な評価の環境・基盤整備、⑤日本発医薬品の国際展開の推進、⑥医療とサービスを融合させるプレーヤーの創出、創薬業界の新陳代謝を促すグローバルなベンチャーの創出－という、これまでの6項目のほか、新たに7番目の戦略として、「医療用医薬品の流通改善への一層の対応」を追記した。

10月２日の厚労、文科、経産の３省と医薬品業界、アカデミアの代表が一堂に集う「革新的医薬品創出のための官民対話」で、厚労省が提示した６本柱に、新たに流通改善への一層の対応が盛り込まれた。総合戦略では、リアルワールドデータ（RWD）の活用による研究開発のコスト低減と効率性向上の環境整備を掲げている。