中医協総会 調剤報酬付け替え請求問題が話題に 18年度改定へも影響か
公開日時 2017/08/10 03:51
クオール、アイセイ薬局と相次いで調剤報酬の付け替え請求問題が報じられたが、8月9日の中医協総会ではこの問題が話題にあがり、早くも2018年度調剤報酬改定への影響が懸念される事態となった。16年度調剤報酬改定では、処方箋の集中率などを要件に、チェーン薬局に属す大手門前薬局の評価を引き下げる調剤基本料3が新設された。付け替え請求は、処方箋の集中率を低下させることで、調剤基本料の引下げを免れる狙いがあるとみられている。この日の中医協で診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「大変遺憾であり、同じ薬剤師として腹立たしい」と述べたうえで、厳正に処することの必要性を強調した。
16年度改定で新設された調剤報酬3(20点)は、処方箋回数が月4万回超のグループに属する保険薬局のうち、①処方箋集中率が95%超、②特定の医療機関との間で不動産の賃貸取引がある―薬局を対象に引き下げられる。すべての要件をクリアしてかかりつけ機能を発揮する調剤基本料1(41点)から大きく点数が引き下げられることになる。高齢化を見据え、厚労省がかかりつけ薬剤師・薬局を推進する中で、いわゆる大手調剤チェーンに属す門前薬局にメスが入った。これを免れるためには、かかりつけ薬剤師の取得など、厳しい要件が課せられている。
調剤報酬をめぐっては3月29日の中医協総会で、診療側の中川俊男前委員(日本医師会副会長)が、かかりつけ薬剤師の算定について診療側から疑義を示しており、かかりつけ薬剤師や、大手チェーンを対象とした調剤基本料3の要件厳格化をめぐり、近秋からの議論で焦点となるとみられている。
◎診療側・安部委員 社会的責任も考慮「厳正な対処を」
調剤報酬の付け替え請求問題は、4月にクオールの秋田地区で、処方せんを受けた薬局と調剤を行った場所が異なる処方せんが10枚程度あったことが発覚。これを受けて、自主点検を行ったアイセイ薬局でも、同様の事案が発覚し、8月4日に公表。詳細については、行政当局と調整中とするにとどめ、明らかにしていない。同社は、会社としての関与を否定しているが、「素地を会社が作ったという誹りは免れない」(同社・コーポレート・コミュニケーション部)としている。
この日の中医協で、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、個別事案のため直接的な答えは避けたが、「不正等が確認され手保険薬局の指定取り消し等が行われた場合には地方厚生局から事実関係として公表される。不正請求が行われた場合には、返還に資するということは改めて苦言させていただく」と述べた。
これに続いて、診療側の安部委員は、地方厚生局から個別指導や観察処分が下ることを見通した上で、「ルールに基づいて、厳正に対処することがまず重要になる。社会的な責任もあるので、その観点からもしっかり議論していきたい」と発言した。
◎日薬 会員企業向けに自主点検の徹底求める 「発生を重く受け止める」
こうした状況を踏まえ、日本薬剤師会は山本信夫会長名で、中医協開催の前日にあたる8月8日付で都道府県薬剤師会会長宛に、「調剤報酬に係る適正な保険請求に関する自主点検の実施について」と題した通知を発出した。通知では、同様のケースが複数発生したことに触れ、「誠に遺憾であり、保険調剤に携わる者としての信頼を揺るがしかねない事態だと認識している」との見解を示した。その上で、今回の事案の発生を重く受け止め、自主点検を行うよう指示した。
不適正な事案が発覚した場合には9月15日までに、地方厚生局、自治体への報告・相談するとともに、点検結果について都道府県薬剤師会を通じて報告するよう求めている。
【訂正】下線部の会社名の表記に誤りがありました。訂正します。(8月10日9:40修正済)