中医協 通常承認のゾコーバ、薬価収載は新薬と同様に検討 市場拡大再算定ルールに疑義も
公開日時 2024/03/14 04:52
中医協総会は3月13日、新型コロナ治療薬・ゾコーバが通常承認されたことを踏まえ、薬価収載に向けて、まずは薬価算定組織で検討を進め、それを踏まえて中医協総会で議論することを診療・支払側が了承した。同剤は年間1500億円超の市場規模となる可能性を否定できない高額医薬品として特例的な対応がなされており、通常承認時に改めて中医協で議論することとなっていた。3月5日に通常承認されたことから、議論が始まった。単純推計による市場規模では市場拡大再算定の適用要件に該当しない。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、類似薬効比較方式で算定された医薬品は、使用実態の著しい変化がない限り市場拡大再算定の対象外となることに疑義を表明。「原価計算方式と同様の取り扱いをすることについても、次回の制度改革に向けてぜひ検討すべき」と指摘した。
厚労省は、ゾコーバの位置づけについて、ガイドラインでの考え方は同様で、通常承認以降も対象患者についての添付文書の記載内容に変更はなく、同剤の位置づけに変更はないと説明。通常の新薬の薬価収載と同様、審査結果や使用実態を踏まえ、新薬の薬価収載と同様に、企業の意見を踏まえ、薬価算定組織において検討。そのうえで、中医協総会で薬価算定組織における算定結果に基づき検討することとなった。
◎単純推計でのゾコーバの市場規模は54万人、280億円程度 再算定の適用要件に該当せず
同剤をめぐっては、急激な市場拡大が否定できないことから、“同剤に限った”特例の市場拡大再算定ルールも導入されていた。
厚労省は収載後の実際の市場規模が2023年3月31日~24年2月11日までの推定使用患者数が約100万人であることを報告。このうち、自己負担なしの時期(23年3月31日~ 23年10月15日)は約80万人、一部自己負担ありの時期(23年10月16日~24年2月11日):は約18万人だった。推計から単純に換算すると、年間およそ54万人、280億円程度の市場規模と説明した。製造販売業者が中医協に提出したピーク時(23年)の市場規模は37万人、192億円で、同剤は類似薬効比較方式で算定されていることから、「直近の市場規模は、当初の予測と同程度であり、市場規模及び予測販売額比のいずれも再算定の適用要件に該当しない。また、急激な使用実態の拡大もないことから、本剤に限った市場拡大再算定ルールにも該当しない」とした。
そのうえで、同剤に限った市場拡大再算定のルールを継続するか、中医協総会で薬価を議論する際に検討することも提案された。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「現状ルールを継続する形で良いと思うが、本剤の薬価の検討時に改めて中医協の総会で検討することで良いと考える」と述べた。
◎支払側・松本委員 市場拡大再算定 類似薬効比較方式算定品目も「価計算方式と同様の取り扱いを」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「ゾコーバ錠の承認事項や位置付けに変化がないということだが、使用実態を見ると100万人で、当初予測の37万人よりかなり多くなっている。また当初は患者負担がなく、患者負担が発生した10月以降は使用が抑えられているという状況もここから読み取れる」と指摘。「我々保険者の立場、特にゾコーバの対象となる重症化リスクのない現役世代の患者が多い健保組合の立場から見ると、保険財政という視点では、当初見込みの2倍以上の影響があったということだ」と強調した。
そのうえで、「今後は患者負担もあることを踏まえれば、感染動向が大きく変わらない限り、市場規模が上振れするようなことはないかもしれないが、そもそも類似薬比較方式で算定された薬剤について、使用実態に著しい変化がない限り、市場拡大再算定が適用されないということには強い疑問が残る」と指摘。「原価計算方式と同様の取り扱いをすることについても、次回の制度改革に向けてぜひ検討すべき点とということを指摘させていただく」と強調した。
自己負担の有無で患者数が変化している点にも疑義を示し、「医療現場におかれてゾコーバを使用する臨床上の必要性をどのように判断していたのかということも非常に重要なポイントになるかと思う」と述べ、診療側の意見を質した。これに対し、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「新型コロナ感染症に関しては、ガイドラインなども提供されておりますので、それらを参考として治療にあたっているものと考えている」と応じた。
なお、ゾコーバ錠125mgの現行薬価は7407.40円で、24年度改定以降も変更はない。