米・トランプ大統領 NIH所長留任を認める
公開日時 2017/06/22 03:50
米ドナルド・トランプ大統領は6月6日、国立衛生研究所(NIH)所長に、Francis Collins氏を指名したと発表した。オバマ政権時代から務めており、留任となることを認めた。米議会専門誌「The Hills」や科学誌「Science」などが報じた。
トランプ大統領は、大統領就任後、Collins氏には暫定的にNIH所長に留まるよう指示していたが、2018年度予算では、NIH予算を58億ドル削減するほか、国立癌研究所(NCI)は10億ドル、国立精神衛生研究所(NIMH)は3億ドル、国立アレルギー及び感染症研究所(NIAID)は8億4000万ドルの削減を提案するなど、科学予算に大ナタを振るった。
保健福祉省(HHS)長官ではTom Price氏、食品医薬品局(FDA)長官ではScott Gotlieb氏などTrump氏好みの人物を指名したため、NIH所長はどうなるか注目されていた。いわゆるオバマケアの撤回、TPP離脱、パリ協定離脱、キューバとの国交回復の見直しなどオバマ前大統領の業績はすべてと思えるほどひっくり返しているので、Collins氏指名には意外の感を持つ向きもある。
Collins氏は、エール大学で物理化学博士号、ノースカロライナ大学で医学博士号を取得した。国際ヒトゲノムプロジェクトを率いた遺伝学者で、ES(胚性幹細胞)研究の専門家。
同氏は、トランプ大統領の指名を受け、声明を発表、「NIH所長として続けられることは光栄であり、バイオメディカル研究を通して人々の健康を促進させ、苦痛を取り除くことために前例のない機会に恵まれることは大きな栄誉である」と述べたうえで、「私は、NIHやHHSの同僚、政権、議会、研究コミュニティおよび患者コミュニティと引き続き協力していきたい」と抱負を語った。
Collins氏がES研究の第一人者であることから、一部の連邦議会議員40名は、5月22日にES研究はクローン人間作製につながるので、そういう人物がNIH所長であるのは好ましくないと観点からNIH所長に留任させてはならないとトランプ大統領に要望書を提出していた。
トランプ大統領は、同氏指名を決めた理由についてはまったく触れていない。単に適材がいなかったからかどうかは不明である。