米バイオジェン・ヴォナッソスCEO 脊髄性筋萎縮症の薬物治療体制整備に注力 新薬ヌシネルセン投入で
公開日時 2017/01/31 03:50
米バイオジェンのCEOに1月に就任したミシェル・ヴォナッソス氏(写真右)は1月30日、東京都内で来日記者会見を行い、米国で承認取得し、日本、EUなどで承認申請中の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセンの市場投入により「新しい治療を行うための制度づくりが必要」と述べ、薬物治療体制の整備に注力する姿勢を示した。同席した日本法人のスティーブ・スギノ社長(写真左)は、現在、ごく限られた施設での治療体制を、47都道府県で治療を受けられるようにする考えを明らかにした。そのため、営業、メディカルのそれぞれに専門チームを立ち上げて取り組む方針。
SMAは、脊髄や下位脳幹の進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする希少疾患で、重篤で進行性の筋委縮や筋無力を引き起こす。最も重篤なタイプでは麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがある希少疾患だが、治療薬はない。同剤は、疾患に関連するタンパク質をつくるRNAを標的にする核酸医薬品で、運動ニューロンが機能するタンパク質を増やすことが期待される。米国では2016年12月に承認を取得したほか、日本(16年12月申請)、EU、オーストラリア、カナダで承認申請し、他の国々でも17年中に申請する方針。
ヴォナッソスCEOは「世界中に届けることにコミットしている」と説明、「この薬にアクセスできるようにしていきたい。そのためのインフラ整備をしていく必要がある」と述べた。しかし、治療体制の整備には、疾患啓発、診断等で「時間がかかる」との認識を示した。
バイオジェン・ジャパンのスギノ社長は、ヌシネルセンの上市を17年下期に見込み、「患者さんの住んでいる地域で提供していきたい」と述べ、大学病院を中心に、一から治療体制を整備していく考えを示した。疾患啓発のほか「適切な診断だけでなく、迅速な診断が必要」と強調。精度と迅速さを確保するため「セントラルラボラトリー」の形で整備していきたいとの意向を示した。終了後、治療体制の整備を支援するため社内に営業、メディカルのそれぞれに専門チームを立ち上げて取り組む方針を明らかにした。
日本は最優先市場
ヴォナッソスCEOは、同社が持つパイプラインと日本で増加が見込まれる疾患の疫学的環境が合致するとして「日本は最優先市場の一つ」と述べ、特にアルツハイマー型認知症の治療に貢献していきたいとの意向を示した。開発中の治療薬としてはフェーズ3に、早期患者を対象にした、抗アミロイド抗体Aducanumab、タンパク質AβについてBACE(酵素)を阻害し脳内凝集を減少させる作用が期待されるBACE阻害薬「E2609」(エーザイと共同開発)がある。日本では17年にAducanumabの臨床試験の被験者登録を始める計画。承認申請は22年をメドにする。
高額薬剤問題について質問に対しては「官民がパートナーシップを構築して協力」し、公衆衛生上の課題として対処すべきとの考えを示した。