自民厚労部会長・意見書提出「薬価の全面毎年改定再考求める」 医薬品卸や薬局の負担懸念
公開日時 2016/12/13 03:53
自民党厚生労働部会の渡嘉敷奈緒美部会長は12月12日、「薬価が全品目、毎年薬価改定、薬価調査が行われないよう、再考を強く要望する」とした意見書を塩崎厚労相に提出した。提出時には、尾辻秀久元厚労相が同席した。意見書では、薬価の毎年改定実施により、逆に薬価が高止まりすることや、薬局が在庫の観点から資産価値が減少し倒産の危機を招くなど、”副作用”があるとの懸念を表明した。全面毎年薬価調査についても、9月に実施するとすれば、価格形成前の実施で、調査の正確性が担保されないなどと指摘した。渡嘉敷部会長は、薬価の毎年改定の対象範囲の議論の前に、「毎年改定自体にも問題があるということで意見書を届けさせていただいた」と述べ、政府に慎重な姿勢を求めた。官邸には、薬価の全面毎年改定を求める声があるが、塩崎厚労相はこうした厚労族の声を踏まえ、麻生財務相、菅官房長官、石原経済・財政相の4大臣と、薬価制度の抜本的改革の基本方針策定に向けた調整を進める。
◎薬価が変動するのは長期収載品、後発品の約4割のみ
意見書では、毎年改定を実施することで、製薬企業が仕切り価を高止まりさせる傾向が顕著になると指摘。卸も適正利益確保の観点から、医療機関への納入価を下げにくくなることから、「2年に1度の改定の場合より、薬価は確実に高止まりする」と指摘した。
毎年薬価調査の実施については、9月に実施すると仮定すれば価格形成前の実施となり、単品単価契約の後退などにより、調査の正確性が担保されないと指摘した。
対象品目についても、薬価が変動する薬は、実質的に後発品のある先発薬、後発薬の4割のみであると指摘。価格変動する医薬品は一部であることから、全面的な調査を実施することは、「10の経費をかけ、1の効果しか得られぬ労力的にも経費的にも無駄な行為になる」と指摘した。
渡嘉敷部会長は、意見書提出後、記者団に対し、「毎年薬価改定は現実的に非常に厳しいのではないか。卸や薬局の声を届けて、現実的には厳しいのではないかという話をした」と説明した。
塩崎厚労相は、先週7日に開かれた経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)に、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)データや経時変動調査を活用し、効能効果の追加などで当初の予想販売額を上回る医薬品や、後発医薬品など市場実勢価格と薬価の乖離率が大きい製品を洗い出すなど、一定の水準や要件を定めた上で、薬価を引き下げる考えを示している。これに対しては、「実際価格が動いているのは4割なのでそこでという話はあるかもしれないが、全面毎年改定するのは国としてプラスになることはないということでその意見を述べさせていただいた」と強調した。
◎超党派医療産業懇話会 薬価の毎年改定テーマに議論
同日開かれた、日本維新の会の松浪健太議員と自民党の西村康稔議員が世話人を務める「超党派医療産業懇話会」の準備会でも、薬価の毎年改定が議題となった。この日の準備会には、厚労省から、保険局の城克文総務課長と、医政局の大西友弘経済課長が出席した。松浪議員は、薬価の毎年改定が実施されることで、医薬品卸の負担が増大することや、外資系企業にとって日本市場に投資の魅力が薄れることなどの問題点があると指摘した。一方で、抗がん剤・オプジーボのように、効能追加により財政を圧迫する例については、対応を検討する必要性も指摘し、「巨額再算定(特例拡大再算定)に代わる仕組みも提案していきたい」と述べた。今後は、4大臣が策定する薬価制度の抜本的改革の基本方針を踏まえて、継続的に議論し、会として薬価制度改革などの提案を行う考えを示した。