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塩野義・手代木社長 低分子創薬でリーズナブルな価格実現に意欲 少子高齢化時代に合致

公開日時 2016/11/01 03:55

塩野義製薬の手代木功社長は10月31日の記者会見で、2020年までの中期経営計画を解説し、同社の強みである低分子創薬を軸に効率化を進めることで、イノベーションと医療経済性を兼ね備えた新薬を創出する方針を明らかにした。少子高齢化が進み、医療費の高騰が社会的な議論を巻き起こす中で、現在、中医協で議論となっている高額薬剤問題など医療コストや医療経済の課題を経営者がどう提起するか注目されていた。手代木社長は、「社会に優しい製薬企業」という新たな視点を提示した上で、「少子高齢化に対して、リーズナブルな価格でお役にたてる薬剤はないか追い続けている」と主張。“創薬型製薬企業として社会と共に成長し続ける”ことを同社の2020年に向けた経営方針として堅持する姿勢を鮮明にした。


中期経営計画は2014年4月からスタート。“選択と集中”を旗印に、疾患領域では感染症と疼痛・神経、地域では日米に集中的な投資を行い、順調に定量目標を達成する中で、アップデートに踏み切った。


策定に踏み切った背景には、医療環境の変化がある。手代木社長は、「ここ2、3年の大きな変化として特筆すべきは、高額医薬品に対する社会の批判だ」と指摘。高齢化の波が全世界に押し寄せる中で、高額薬剤問題に代表される、“イノベーションと社会保障の持続可能性の両立”は、いまや国連の議題となるほど、グローバル共通の社会課題となっている。手代木社長は、「イノベーションだから高い薬価で当然だろうということに対して、社会が“ノー”と言い始めている。これに対してどういう企業体質で立ち向かっていくのか」と述べ、2020年に向けた基本戦略として、「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」を掲げるに至ったと説明した。


◎インフルエンザ、多剤耐性菌などバイオマーカー開発にアクセル



さらに、「できる限り、リーズナブルなコストで、多くの国に提供できる会社にならない限り、2020年、25年を生きていけないのではないかという危機感はある」と強調。同社の強みでもある低分子創薬を軸にバリューチェーンの効率化を進めることで、イノベーションと医療経済性を兼ね備えた新薬の創出に注力する方針を示した。こうした中で、重視されるのが、研究開発の効率性だ。同社は、ビッグデータの活用と、バイオマーカーの確立に力を入れ、効率化を追求したい考え。

特にバイオマーカーについては、すでに心不全や腎不全の重症度を測るBNPを有するなど、同社の強みの一つだが、「(会社全体が)循環器・代謝領域から精神・神経、疼痛領域と感染症領域にシフトする中で、少し向かっている方向にバイオマーカーが乗り切れていなかったということもあった」と手代木社長。インフルエンザや多剤併用菌などのキットの開発など、自社医薬品のパイプラインとシナジー効果を追求することで価値を最大化できると期待感を示した。


米国では、遺伝子などでサブグループにわけた最適な治療法を確立する”プレシジョン・メディシン”、日本では最適使用が推進されており、最適な患者に最適なタイミングで医薬品を届けるためにも、バイオマーカーの重要性は高まっている。手代木社長は、「少なくとも感染症領域は、インフルエンザのキット、それをさらに進化をさせていかなければいけないだろう。多剤耐性菌も、すぐに結果が出ないと最適化に向かわない。多剤耐性菌のクイック検査、医療現場ですぐ使えることを考えている」と述べた。


◎新たな中計 新製品売上2000億円をKPIに 長期収載品に「必要以上フォーカスしない」



新たに策定した中計では、定量的なKPIも変更した。成長性、効率性、株主還元の3つのフレームワークからなるもの。具体的には、「成長性」として新製品売上2000億円、経常利益1500億円、「効率性」として、投下資本利益率(ROIC)13.5%以上、CCC(Cash Conversion Cycle)5.5か月、自社創薬比率50%以上、株主還元としてROE15%以上、DOE4.0%以上を掲げた。これまで売上5000億円を目標の一つに定めていたが、新製品売上に変更した。

手代木社長は、「後発医薬品80%時代の中で、長期収載品の売上は、コントロールしづらい時代に入っている」との見解を表明。同社の売上を牽引してきたクレストールの特許切れを2017年に控えるが、「長期収載品については必要以上にフォーカスして期待するのではなく、自力で企業のもつ強さを寄与するという精神から新製品売上を新たな指標とした」と説明した。また、自社創薬比率も50%以上と高率な目標だが、「買収等に興味がないわけではない。得られるものとのバランスを考えたときに我々のメリットが今のところはない」と述べ、創薬型製薬企業として今後も注力する方針を改めて示した。
 

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