財務省は10月４日の財政制度等審議会財政制度分科会に、2017年度予算編成に向けて抗がん剤・オプジーボなど高額薬剤の薬価の臨時的な改定や高額療養費の見直しを提案した。このほか、第２・第３類のスイッチOTC医薬品に類似する医療用医薬品の保険償還からの除外や、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入などで、社会保障費の自然増の伸びを年間6400億円から5000億円まで圧縮する方針だ。高額薬剤問題について厚労省は、きょう5日の中医協総会で薬価の引下げを含めた今後の取り扱いについて議論する。本来薬価改定年でない異例尽くめの2017年度予算編成に向けた議論が、政府・与党を巻き込んでいよいよ本格化する。


抗がん剤・オプジーボに代表される革新的医薬品は、治療成績の向上が期待されている一方で、財政上どう負担するかは国として喫緊の課題だ。国民医療費の伸びも、高齢化以上に高額薬剤の影響など医療の高度化による影響が大きいことも示されている。革新的医薬品の上市が今後も見込まれる中で、国民皆保険の維持の観点から早急な対応が求められている。財務省主計局は、具体的な施策として、▽薬価の保険収載、薬価算定・改定の在り方の見直し、適正使用の推進、▽自分で対応できる軽微なリスクに係る保険償還の在り方、▽薬剤に係る自己負担の在り方、▽高額療養費の見直し――をあげた。高額薬剤については薬価などで適正化を図る一方で、風邪や腰痛など軽微な疾患ではスイッチOTC類似の医療用医薬品を保険給付の対象から外すことを検討するなど、自己負担を増やすなどして、保険給付と負担のバランスを取りたい考えだ。


◎オプジーボ“速やかに適正水準まで”薬価改定を


オプジーボは、年間3500万とも言われるほど、薬価が高額だ。悪性黒色腫の適応取得から非小細胞肺がんの効能効果追加により、薬価は変わらないものの、予想対象患者数が32倍、売上予測が41倍になったと指摘。さらに腎細胞がんの効能効果が追加される中で、次期薬価改定までの「残り１年半を放置することは、医療費や国民負担に与える影響の大きさ等の観点から問題」と指摘。「速やかに適正水準まで薬価改定を行う」ことの必要性を強調した。それと同時に、安全性の観点から、最適使用を推進するガイドラインを策定し、その遵守を保険償還の条件とすべきとした。

会合後の会見で、財政審の吉川洋会長（立正大学経済学部教授）はこの日の議論で、高額薬剤問題について議論があったことを認め、新薬開発の重要性を踏まえ、「製薬企業の適正な利益というもの、開発のインセンティブが担保されないといけない。一方で、薬価は、医療費の重要な一部でもある。こうしたことを勘案し、適正な価格付けがなされなければならない。委員の共通認識ではないか」と述べた。

また、今後の改革の方向性として、保険償還の可否や保険償還額の決定、薬価改定に際して費用対効果評価の本格的な導入、薬価制度の抜本的な見直し、生活習慣病治療薬の処方ルールの設定を行う必要性も提案した。


高額療養費については、70歳以上の高齢者で、同じ所得区分であっても上限額が70歳未満よりも定額に設定されていることや、外来でも負担上限額を定めた特例措置がある。財務省主計局は、収入に応じた負担を求める観点から、外来特例の速やかな廃止とともに、70歳以上の所得区分に応じた自己負担上限の引き上げを求めた。


◎湿布薬、うがい薬、漢方薬、目薬、胃薬などスイッチOTC類似医薬品　保険給付外検討も


一方で、風邪や腰痛などの疾患については、スイッチOTCの活用でセルフメディケーションを推進し、医療費の効率化を目指すことを打ち出した。湿布薬、うがい薬、漢方薬、目薬、胃薬など、「例えば第２類・第３類となっているものなど、長らく市販品として定着しているOTC医薬品に類似する医療用医薬品」について、保険給付の対象から外す、もしくは一定の追加的な自己負担を求めることを提案した。さらに、安全性などスイッチOTC化について一定のルールを明確に定め、満たした場合には自動的にスイッチOTCとなることも提案した。

そのほか、かかりつけ医の普及が進まない中で、外来機能の分化を進めるため、かかりつけ医を受診した場合の受診特定額負担を導入すべきだとした。