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製薬協・畑中会長 高額薬剤問題「バイオマーカー確立で個別化医療、最適使用推進 皆保険維持に貢献」 製薬協政策セミナー

公開日時 2016/09/05 03:52


日本製薬工業協会(製薬協)の畑中好彦会長(アステラス製薬代表取締役社長CEO)は9月2日の第28回製薬協政策セミナーで、「個別化医療、日本の使用最適化に向けた取組をさらに推進し、国民皆保険制度の維持に貢献する」と述べた。具体的には、バイオマーカーなどの有効性・安全性に関する予測技術の実用化を通じ、投与開始前に有効な患者集団を特定することで、「本当に有効性が期待できる患者に必要な期間、必要な量を投与できるように研究開発段階から取り組む」考えを示した。一方で、市販後には新規作用機序の医薬品などを対象に最適使用推進ガイドラインが策定されるが、「ガイドラインが策定されない医薬品についても、継続的な適正使用を推進する」ことも強調した。


◎畑中会長 最適使用実現には「MID-NETやゲノムデータベースの最大限活用を」



畑中会長は、「革新的新薬を患者に届けることは製薬企業の使命だ」と強調した。製薬企業として臨床開発から市販後にわたる適正使用に向けた継続的検討が必要だと指摘。開発段階では、バイオマーカーなどの確立、市販後には最適使用ガイドラインの周知をすることで、医薬品の最適使用推進に注力することが重要だとの考えを示した。その上で、開発段階のバイオマーカーの確立などによる最適使用推進実現のためには「医療情報データベース基盤(MID-NET)や臨床ゲノム情報統合データベースなど、治療、患者データベースを官学民で最大限に有効活用する必要がある」と述べた。

市販後については、実臨床では臨床試験の結果からは予期せぬ副作用が発現するリスクがあると指摘した上で、「最適使用ガイドラインの策定などで、適切に使用されるように引き続き協力するということは大賛成だ」と述べた。ただ、「ガイドラインの策定により、革新的な新薬への患者のアクセスを阻害があってはならないと考えている。当該医薬品の薬事承認審査、保険収載手続きの時に支障が出ないようにご配慮いただきたい」と強調した。

国がイノベーションを推進する施策を立案する一方で、後発医薬品80%目標が定められたことなどの環境変化については、「研究開発型の医薬品企業である製薬協としては、ますます新薬創出に重点を置いた企業に変わり、世界の中で競争していかないといけない」と強調。グローバル展開するための企業規模も議論になるところだが、「企業としては永続性の観点も重要だ。選択された開発フィールドで新薬を出すことで結果としてサイズが大きくなるという循環がコンフォタブル。大きくなればなるほど、継続するために価値を出し続けなければならないのかというのが大きな課題になっている」と述べ、企業としていかに投資の集中と選択を行うかが重要との考えを示した。

そのほか、国には革新的医薬品創出に向けた環境整備を求め、▽研究開発税制の維持・拡充、▽イノベーションを適正に評価する薬価制度の維持、▽知的財産権の保護に向けた各国との連携――をあげた。


◎厚労省・大西課長 最適使用は「製薬企業にとって良いチャンス」 医療ICTやAIの影響指摘



厚生労働省医政局の大西友弘経済課長は、高額薬剤問題について、ひとつの薬の薬価の高さ、売上高が巨額であること、効能追加により売上が増加することの3つの観点があると指摘。「単に単価だけ抑えればいいとか、売れなくすればいいという風に物事を解決してはいけないと思っている」との考えを示した。米国では、個々の遺伝子やライフスタイルなどに応じてサブグループに分け、治療法や予防法を確立する“プレシジョン・メディシン”が提唱されていることを引き合いに出し、「誰にでも同じように処方するという時代ではなくなってきている」と説明した。

こうした中で、厚労省は最適使用ガイドラインの策定を進めるが、「国から押し付けられた感で、消極的な受け身の態度で見てしまうと、非常につまらない制度だが、製薬企業にとっても非常に良いチャンスだ」との考えを表明。「これまで薬の処方は医師に100%ゆだねられてきたが、最適使用ガイドラインの中で、ルールを示していくことができる」と述べた。製薬企業が積極的にエビデンスを構築していくことで、「企業がイニシアチブをもって前向きに受け止めていただけると、財源を節約するためのガイドラインということではなく、お薬を有効かつ効率的に患者に提供するためのツールとして有効に機能するのではないか」と述べた。

大西課長は、製薬企業が「国内市場だけでなく、海外市場にいく」ことの必要性を強調。「日本は国民皆保険、人口減少という中で、海外を見ていく体力という意味でも、規模が大きい会社の方がグローバル転換しやすい」との見方も示した。また、現在ベンチャー企業の新興の施策として進める国際薬事相談などが活用できることも示唆した。

また、今後の製薬産業の在り方については、ITや人工知能(AI)が産業に与える影響を指摘し、「近い将来の世界で一番大きな製薬メーカーは、きっとグーグルだというような時代が来つつある。従来の新薬創出企業の姿は、大きく変わっていくということは間違いない。そういう波をうまくとらえて、画期的な新薬を創出し、日本の保険医療水準の向上や日本経済の成長に貢献していただく。一方で、画期的新薬が創出できない企業も(ドラッグ・リポジショニングなどを選択肢として)それぞれの道を見出し、付加価値を見出すことはできる」と述べた。また、他業種とのコラボレーションに可能性も指摘し、「医薬品産業もIT、食品、環境分野とお持ちの知見を他の分野の業界の方々とコラボレーションすることで、広い意味でのヘルスケア産業ということで、国民の健康・医療の発展に貢献してほしい」と述べた。


◎製薬協・伍藤理事長 産官学で「一定のコンセンサスを」 共通認識の重要性強調



製薬協の伍藤忠春理事長は冒頭の挨拶で、「具体的な政策議論をする前提として、お互いの立場が違っても共通の認識をもつ」と述べ、産官学が一堂に会して議論することの必要性を強調した。伍藤理事長は、「医薬品の価格は政策的なものに支えられ、守られ、規制されながら、色々な製薬の下で成り立っている。一定の基本的なところでの合意、コンセンサスを得る努力をしなければならないという宿命にある」との見方を示した。

さらに、年末にかけて税制の議論が行われる中で、研究開発を行う産業を税制上優遇することで支援する“研究開発税制”が議題となることを指摘。現行の制度は2016年度末までの時限措置であることから、「特定の業界だけを支えるような税制は、法人税を引き下げるのであれば必要ないのではないかという議論が益々大きくなる。難しいかじ取りを迫られている」との考えを表明。研究開発、それに伴う技術革新を我が国がリードし、どう社会的に評価するか。研究開発そのものの価値をどう評価するかが根底になければいけない」との見解を示した。

 

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