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【World Topics】データ解析で医療過誤防止

公開日時 2016/08/08 03:50

オバマ政権がリードしたMedical Malpractice Law改正により、幾つかの州で医療過誤の損害賠償金額および慰謝料に支払い上限が設けられてから、米国の医療過誤訴訟は減少傾向にあると言われている。だが、Health Affairs誌が2013年 に掲載したレポートによれば、40年の診療経歴を持つ平均的な米国の医師は、その間に平均約50ヶ月(キャリアの 11%の時間に当たる)を医療過誤訴訟への対応に費やしている。

医療過誤防止に積極的な解決策をもたらそうと活動しているのは医療過誤訴訟保険を手がける保険会社である。たとえば医師によって創業・運営されている医療過誤専門保険会社The Doctors Company (http://www.thedoctors.com ) は最近数年間に起こった医療過誤訴訟のケースデータを分析する40以上の研究プロジェクトを実施してきた。

またハーバード大学医学部卒の医師だけを対象にした医療過誤保険会社Crico(https://www.rmf.harvard.edu)はケースデータを積極的に提供。医療過誤改善に資する研究を奨励してきた。

ビッグデータ解析技術の進展で医療過誤の事例解析も加速。解析結果が次々と共有され始めている。

たとえば整形外科では「治りきらない段階での事故や怪我」の訴訟が多いのだが、2007〜14年の1895件の訴訟ケースを分析した結果。事例の29%は患者自身の自己責任」に帰されるケースであった。 このようなケースに至る患者は、治療途中で医師を変えてしまうなど、往々にして医師の指示に従わず、適切なフォローアップをしない。ソリューションは医師が治療だけでなく患者教育にも責任を負うことだという 。

出産をめぐる医療過誤訴訟が多発しているのは産科だ。2007〜14年に提訴された母親が被害者の882例を分析した結果では、事故は主として医師のケースマネジメント不足で引き起こされている。多いのは、 胎児の大きさを測定しないまま自然分娩させて事故に至ったケース、妊婦の複合合併症に気づくのが遅れたケース、出産後の感染予防が不十分であったケースなどである。ソリューションはハイリスクな妊婦を確実に同定するプロトコルの導入だ。

「共通して重要なのは患者とのコミュニケーションの徹底」とデータ・サイエンティストと一緒に解析を行った医師は言う。「十分な情報が共有され、十分なコミュニケーションが取れている時には、たとえ結果に対する満足度が百点満点でなくても、訴訟にならず、医師ー患者双方が落ち着いてbベター・ソリューションを探すことができる」。(医療ジャーナリスト 西村由美子)

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