MR#1コンテスト 2015 (1/2)
公開日時 2015/12/28 00:00
MVMRに淡路育弘さん(田辺三菱)
テーマは「地域医療への貢献」
5人のMRが決戦 目立った患者貢献意識
ナンバーワンMRを決める「MR#1コンテスト 2015」(主催:MR#1実行委員会、委員長:池上文尋・メディエンス代表)が11月22日、東京都内の星薬科大学で約90人の参加を得て開催され、最高殊勲MR(MVMR)には田辺三菱製薬の淡路育弘さんが輝いた。今回で第2回となる本大会のテーマは「地域医療への貢献」。今後進む地域包括ケアにおけるMR像を問うた。応募のあったMR30人の中から書類、自己紹介動画、小論文による一次審査を通過した5人(次頁参照)が決戦に出場。地域や顧客の課題を独自に探し当て、結果として患者の治療やQOLの向上に結び付けることを意識した活動が目立った。(酒田 浩)
ペインポイント探し当て
ソリューションを示す
ロールプレイ審査は、当日に一定の課題とシチュエーションが5人それぞれに与えられ、医師や薬剤師、看護師を相手にその場で面談を行う。制限時間は5分だが、面談する医師や薬剤師、看護師の悩みの種(ペインポイント)を具体化、意向を汲みながらソリューションを示し、次回のフォローアップにつなげる姿勢が共通してみられた(次頁参照)。
その中で他の4人と趣が異なったのは淡路さん(田辺三菱製薬)。医師の治療方針、治療の中で重視することを聞き出す姿勢に終始し、医師に副作用の不安が強いことが分かると、安全に使える患者像を提示しつつ、不安の払拭に努めた。
プレゼンテーション審査は、各MRがテーマに沿って自らの活動をアピールするもので、個性が出る。今回は、地域の課題を独自に探し当て、患者の治療やQOLの向上を意識してソリューションを示すという活動が各MRに共通して見られた。
濱田さん(サノフィ)は、脳卒中地域連携パスがあるものの、急性期の専門医と病床不足に直面。頸動脈エコーによるハイリスク患者スクリーニングを導入し、早期介入により、半年で脳卒中件数を4割減らし、QOL向上と救急数の減少につながったことを紹介。
内藤さん(中外製薬)は、高齢者の転倒予防をテーマにした活動を説明。転倒予防がQOL向上に役立ち、介護職の負担軽減にもつながるとの思いからで、患者向けの冊子で意識啓発を促しているという。
高尾さん(サノフィ)は、ある病院の薬薬連携の意向を受け支援した経験を話した。一病院の取り組みが、他院へも波及し、地域の問題点が共有可能に。「患者さんのところへ貢献が届くよう取り組みを続けたい」と話した。
松下さん(グラクソ・スミスクライン=出場当時)は、地域連携の動きに即し、大学病院の治療方針に基づく治療が紹介先、在宅でも可能な限り継続されるよう、紹介先の担当MRに同行、EBMに基づいた説明を行う活動をしたことを説明した。
淡路さんは、バイオ製剤による乾癬治療の普及を取り上げた。評価高いバイオ製剤だが、使える学会承認施設と患者宅の距離の遠さ、患者にバイオ製剤や専門施設の認知が不十分という課題に直面。患者に最新治療を知ってもらうため市民公開講座を企画し、患者会の紹介、患者の話、専門医の話、相談コーナーの開催を実施。また、患者宅の近隣に承認施設がないとの課題には、リウマチ治療等でバイオ製剤の使用経験がある施設で治療できるよう連携をサポートした経験を紹介した。
淡路さん「リウマチに苦しんだ祖母を思い」活動
MVMRと特別各賞(次頁参照)は、医師、薬剤師、介護職、患者からなる8人の審査委員(委員長:亀井淳三・星薬科大学薬物治療学教室教授)と会場の投票で決まる。MVMRに選ばれた淡路さんは受賞後の挨拶で「医療業界を目指したのは家族に患っていた者がいたから。祖母が重度のリウマチで、その頃は良い薬もなく、祖父に毎日、痛くて死にたいと言っていたと聞いた。幼少の私は何もしてあげられなかった」と振り返り、「祖母孝行できなかった分を、患者さんに、この仕事を通じて貢献したいという思いが私の今の活動を支えている」と、MR活動にかける思いを語った。
審査委員長の亀井教授は「MR不要論とか言われるが、ひとりでも多くの患者さんを救うためには、医師だけでも、薬剤師だけでも、看護師や他の医療スタッフだけでもダメ。薬物治療で重要な薬の情報を伝えるMRがいて初めて患者さんのためになると思う」と、MRにエールを送り、大会を締めくくった。