16年度診療報酬改定 湿布薬、経腸栄養からも財源確保へ 改定率はプラス0.3%台後半で最終局面
公開日時 2015/12/14 03:51
中医協総会が12月11日開かれ、次期診療報酬改定について診療側の「プラス改定」、支払い側の「マイナス改定」の両論を併記する形で公益委員による意見書を取りまとめた。薬価等の引き下げ財源の扱いについて診療側は「本体価格財源分に充当すべき」と主張したのに対し、支払い側は「診療報酬本体に充当せず、国民に還元すべき」と真っ向から対立している。一方、この日の中医協総会では、湿布薬を1回70枚までに処方の上限を設けることや、入院中に経腸栄養製品を投与した際の入院時食事療養費の引き下げなどが議論された。いずれも改定財源に充当できる改革項目だけに、診療・支払い両側ともこの点では一致した。
中医協が次期改定に関する意見書を厚労省の唐澤保険局長に手渡したことで、16年度予算編成にむけた厚労・財務両省による折衝は最終局面を迎える。厚労省の掲げる歳出抑制項目は、薬価等の通常改定分1400億円超に加え、C型肝炎治療薬など1000億円超の売り上げの薬価を下げる”巨額再算定”、長期収載品の特例引き下げ(Z2)、後発医薬品の初収載時の0.5掛け(10品目を超える内用薬は0.4掛け)に加え、湿布薬や経腸栄養食品の適正化、協会けんぽへの補助金の抑制などを積み上げた。
改定率決定にむけた財務・厚労両省の折衝は今週後半から週明けにかけてヤマ場を迎える。厚労省側は、C型肝炎治療薬の巨額再算定を含む各種改革項目を実現することで、数百億円程度の財源を確保できるとしており、プラス改定の実現に意欲的だ。16年度改定を経て実行される「地域包括ケアシステム」の実現には、医療関係団体との協力や連携は不可欠としており、診療報酬本体プラス0.3%台後半から0.4%程度で最終調整に挑む。"抜本的な見直し”を迫られた調剤報酬も本体、ネットともにプラス改定となる公算が高まった。
◎湿布薬1回当たり上限70枚までの処方へ
この日の中医協では湿布薬の処方上限をめぐる議論がなされ、1回あたり70枚(10袋)を上限とする案が検討された。厚労省側は、処方された湿布薬が何日分に相当するかレセプト上に記載することも提案した。経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)でも市販品類似薬にかかわる保険給付の見直しが求められており、すでにうがい薬やビタミン剤については一部見直されており、それぞれ治療目的以外、単なる栄養補給については算定しないこととされている。
◎胃瘻患者の経腸栄養 入院時食事療養費引き下げへ
胃瘻患者において経腸栄養食品を用いて管理を行っている患者について入院時食事療養費の引下げも提案された。胃瘻患者における経腸栄養製品は、医薬品と食品の2通りがある。医薬品は薬価収載されており、保険給付額(薬価)が1065~1602円であるのに対し、食事として提供される場合には入院時食事療養費として1920円(1食640円)が算定されている。さらに、特別食の算定要件を満たすと、特別食加算(76円)を算定できるなど、医薬品と食品で給付額に開きが見られる。厚労省側はこうした開きを是正する目的で、入院時食事療養費の引下げを提案した。次回改定では、食品である経腸栄養製品に応じた市場実勢価格を把握する仕組みを導入し、さらなる引き下げも検討する。