厚労省「患者のための薬局ビジョン」策定 かかりつけ薬剤師としての職能は“対人業務へ”
公開日時 2015/10/26 03:51
厚生労働省は10月23日、地域包括ケア時代を見据え、すべての薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋を示した「患者のための薬局ビジョン〜「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ〜」を公表した。団塊の世代が75歳を超える2025年、さらには2035年を見据えて地域包括ケア実現に向けて、かかりつけ薬剤師、薬局の姿を明確に打ち出したものとなった。かかりつけ薬局には、①電子お薬手帳や医療ICTなどを通じ、すべての医療機関やOTCなども含めて服用薬の一元的管理・継続的把握、②開局時間外での電話相談など、24時間対応・在宅対応、③医療機関等との連携—の3つの機能を求める。来年度の調剤報酬については、経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針)でも抜本的な見直しを行うとされており、現在中医協で議論が進められている。ビジョンで示された方向性も踏まえて議論が本格化することとなる。
薬局再編の全体像としては、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目指す。さらに患者の求めに応じて各地域に、▽健康の維持・増進についての相談を幅広く受けるなど健康サポート機能を有する薬局、▽抗がん剤等の薬学的管理を行う「高度薬学管理機能」を有する薬局の整備を進める。さらに、団塊の世代が要介護状態の多い85歳となる2035年には、一般的な外来受診が病院から診療所のかかりつけ医へとシフトしていることを見据え、日常生活圏でかかりつけ機能を発揮することも盛り込んだ。24時間対応など、1つの薬局だけでは対応が難しいこともあることから、地区薬剤師会が主導的な役割を果たした輪番体制の構築なども必要と指摘。1つの薬局で完結するのではなく、地域で連携してかかりつけ機能を果たすことの重要性も指摘した。
◎門前薬局からの脱却を 立地から機能へ
薬局ビジョンを貫くキーワードは、「立地から機能へ」、「対物業務から対人業務へ」、「バラバラから一つへ」の3つ。具体的には、門前薬局のような立地に依存し、便利さだけで選択されていた姿から脱却し、薬剤師としての専門性や24時間対応・在宅対応などを求めた。こうした薬局の姿に合わせ、薬剤師の職能も、これまでの薬中心の対物業務から、患者中心の“対人業務”へとシフトすることを盛り込んだ。これまでの薬剤の調整などの業務から、丁寧な服薬指導や在宅訪問での薬学管理、副作用・服薬状況のフィードバック、処方提案、残薬解消などへとシフトすることで、患者から選ばれる薬剤師・薬局となることを目指す。調剤後も患者の状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行うことの必要性も強調した。患者がかかりつけ薬局・薬剤師を選択することで、これまで医療機関にバラバラにあった医薬品情報を一元化することで、複数科を受診した際の多剤・超服投与や相互作用の防止、薬の副作用や期待される効果の継続に加え、患者の薬への理解が深まること飲み忘れや飲み残しが防止され、残薬の解消につながることも期待される。特に高齢者など生活習慣病患者などで、活用を進めたい考えだ。
こうした服用薬の一元的・継続的な管理については、医療ICTの活用をあげる。まずは電子お薬手帳の普及を進め、将来的には、2018年度をめどに各地域で拠点病院を中心といた医療情報のインフラ構築(地域医療情報ネットワーク)が進められており、こうしたネットワークとの連携も視野に入る。
◎ KPI設定で定期的なモニタリングも
これまで医薬分業は、処方箋受取率という単一指標で評価されてきたが、かかりつけ薬剤師・薬局の普及に向け、新たな指標(KPI)も具体的に検討する。ビジョンでは、▽かかりつけ薬剤師・薬局の数、▽疑義照会の実施率、件数、▽24時間対応、在宅対応(医療保険・介護保険)の実施率、件数▽残薬解消の実施率、件数、▽後発医薬品の使用割合への影響−−を例にあげ、こうした指標をもとに毎年度の事業評価についてのモニタリングも実施するとしている。
◎ 日薬「全国どこでも患者本位の医薬分業 覚悟をもって取り組む」
日本薬剤師会は同日コメントを発表し、「全国いずれの地域においても患者本位の医薬分業が実施され、患者・住民から評価されるよう、他の医療関係者との信頼関係を培いながら、覚悟をもって、真摯に取り組んでいく」としている。