第一三共は５月14日、2015年３月期（14年度）決算を発表し、国内の医療用医薬品事業は売上4805億円、前期比1.1％減だった。消化性潰瘍薬ネキシウム、認知症薬メマリー、抗インフルエンザウイルス薬イナビルなどは伸長したものの、薬価改定の影響や、ジェネリックの処方拡大による各種長期収載品の２ケタ減収を吸収できなかった。また、収益性の改善と持続成長を目的に国内グループで実施した早期退職制度（計513人応募）により、国内MR数はこれまでの2300人体制から2200人体制になったことも明らかにした。

最主力品のARBオルメテックの14年度国内売上は、配合剤のレザルタスとの合算で947億円、前期比約３％の減収だった。

同社では「日本市場ナンバー１に向けたシェア拡大」を会社方針にしている。日本に次ぐ売上規模の米国市場で、競合先発品のジェネリック登場に伴うARBオルメサルタン（一般名）の減収基調、そして15年度には高脂血症などの適応を持つウェルコールの特許切れを控えており、こういったことも日本市場への期待が高い背景になっている。

日本市場では15年度も、▽オルメテック・レザルタス▽メマリー▽ネキシウム▽抗血小板薬エフィエント▽経口抗凝固薬リクシアナ▽DPP-4阻害薬テネリア▽SGLT2阻害薬カナグル▽がん骨転移用薬ランマーク▽骨粗鬆症用薬プラリア――にプロモーションを集中する。オルメテックは配合剤を含めて売上990億円（前期比4.5％増）を、メマリーは470億円（27.7％増）、ネキシウムは740億円（6.8％増）を目指す。長期収載品の一層の減収が見込まれるなか、ワクチン事業やジェネリック事業も拡充させて、15年度の国内医療用医薬品の売上目標は4880億円、前期比1.6％増と設定した。

■ランバクシーの買収・売却で「1000億円ほど失った」

連結業績を見ると、売上は日本などでの新薬の伸長や、アジア・中南米でのオルメサルタンや抗菌薬クラビットの伸長により、売上9194億円、前期比2.3％の増収となった。営業利益は抗がん剤ゼルボラフの営業権の減損処理（350億円）による売上総利益の減少や、国内事業再編に伴う経費（139億円）などで２ケタ減益だった。

また、同社では14年度に、子会社のランバクシー社をインドのサン・ファーマ社に売却する手続きを進め、サン・ファーマ社がランバクシー社を吸収合併した。これにより合併差益として2787億円が発生し、第一三共の14年度の最終利益は大幅増益となった。

ただ、第一三共は08年のランバクシー社買収の際に4885億円を投じている。同社によると、諸々の手続き費用や当時と現在の為替などを勘案すると、「投資（＝4885億円）の75％は回収でき、25％ぐらいを失った。失ったのは1000億円ぐらい」という。とはいえ、「勉強という意味ではすごく高かったのではないか、と皆さん思われるかもしれないが、いろいろな状況に応じて努力した結果、今のところにきている」とし、ランバクシー買収当初のように新興国ビジネス、ジェネリックビジネスとひとくくりにするのではなく、例えばサン・ファーマ社と特定の新興国での様々なビジネスを検討・協業することもできているとして、これまでに得られた経験は無駄にはなっていないと説明した。

【14年度連結業績（前年同期比）　15年度予想（前年同期比）】
売上高　9193億7200万円（2.3％増）　9200億円（0.1％増）
営業利益　744億2200万円（34.1％減）　1000億円（34.4％増）
税引前利益　799億3600万円（29.2％減）　950億円（18.8％増）
純利益　3221億1900万円（428.6％増）　600億円（81.4％減）
（注）14年度の売上高、営業利益、税引前利益と各伸び率は、ランバクシーを除く継続事業のみの数値。純利益は継続事業からの利益に加え、ランバクシーがサン・ファーマに吸収合併されたことによる合併差益を含む。

【14年度グローバル製品売上（前年度実績）　15年度予想、億円】
オルメサルタン・ファミリー　2935（3002）2840
プラスグレル　249（201）非開示
エドキサバン　43（4）90

【14年度国内主要製品売上（前年度実績）　15年度予想、億円】
オルメテック　763（791）800
ネキシウム　693（542）740
ロキソニン　495（593）440
メマリー　368（333）470
クラビット　278（335）210
レザルタス　184（185）190
アーチスト　181（224）170
メバロチン　162（215）140
オムニパーク　172（197）160
プラリア　73（32）100
ランマーク　102（81）130
イナビル　166（134）120
ユリーフ　115（114）110
テネリア　76（16）非開示
リクシアナ　36（4）50
エフィエント 7（-）非開示
第一三共エスファ品（ジェネリック）　149（125）非開示
ワクチン事業　322（375）非開示