米メルク Cubist社を95億ドルで買収 抗生物質のポートフォリオ強化 GE訴訟は買収に影響なし
公開日時 2014/12/11 03:50
米メルクは12月8日、抗生物質に強みを持つ、米Cubist社を84億ドル(9996億円、1ドル=119円換算)で買収することに合意したと発表した。メルク社は、Cubist社の株式について1株当たり102ドルで現金を支払う。同買収価格は先週(1日-5日)の平均株価に35%のプレミアムを付けた。買収価格84億ドルにCubist社の純負債11億ドルが追加され、買収規模は総額95億ドルに達する。メルクは買収手続きを2015年第1四半期に完了させる計画だ。
Cubist社は本社をマサチューセッツ州レキシントンに置き、2003年にグラム陽性菌感染症治療薬キュビシン(一般名:ダプトマイシン)発売以降、抗生物質に特化した会社として知られている。売上高トップ製品は、03年に発売されたグラム陽性菌感染症治療薬キュビシン静注で、13年には同剤の売上は初めて10億ドルを超えている。同社は、10年近くキュビシンのみを販売してきたが、ジェネリック(GE)登場を目前に控え、現在病院向けに3剤を販売、主力品4剤を上市している。さらに、耐性グラム陰性菌感染症治療薬Zerbaxa(ceftolozane/tazobactam)を米FDAに申請中。審査完了目標日は12月21日。
同社は、上記の4剤中3剤を買収によって獲得しておる。今年、FDAから経口・静注の両剤型が承認されたSivextro(一般名:テディゾリド)は、昨年、7億700万ドルで買収したTrius Therapeutics社から獲得した。クロストリジウム・ディフィシレ関連下痢症(CDAD)治療薬Dificid(一般名:フィダクソミシン)は、5億3500万ドルで買収したOptimer Pharmaceuticals社から、大腸もしくは小腸の術後回復の促進(術後イレウス)治療薬Entereg(一般名:アルビモパン)は、2011年に買収したAdolor社から獲得した。メルクはこれらをすべてをポートフォリオに加えることになる。
メルクは、伝統的に抗生物質の開発、販売に注力してきた。ただ、近年は、主力領域をワクチン、糖尿病、オンコロジーに絞り、抗生物質には重点を置いていなかった。ただ、現在でも病院向け抗生物質の売上高は20億ドル以上に達する。
同社は、新興感染症や耐性菌の蔓延などにより新規抗生物質のニーズが高いことや、Cubistのような特化企業が、重篤な感染症に対して高薬価の抗生物質の医療経済的に優れたモデルを確立していることを踏まえ、同社は、改めて抗生物質、抗菌薬のポートフォリオ強化を図る。特に、抗生物質を使用するニーズの高い病院市場の救急分野への本格参入を目指す。
メルク社のKenneth C Frazier会長兼CEOは、「Cubist社は、抗生物質分野での世界的リーダーで上市製品および後期パイプラインに強力なポートフォリオをもっている」と述べた。
その上で、「Cubist社の専門知識・技術とメルクの力と世界におけるプレゼンスにより、抗生物質耐性のようなアンメット・メディカルニーズという重要な分野における課題を解決する。病院の急性期治療においても強力なポジションを構築できる」と自信を示した。メルクは、Cubist社の買収により2015年売上は約10億ドル上乗せされる。
◎GE訴訟 買収への影響なし
The Pink Sheet Dailyによると、この買収の発表があった8日に、デラウェア地方裁判所がCubist社とキュビシンの特許係争を行っていたHospira社に同剤のGE医薬品販売を許可する判断が下された。16年には同剤のGEが発売される見込みだ。また同様に、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズにも特許係争の結果、18年の発売が認められている。なお、メルク社はこの状況について、買収への影響ないとの見方を示している。
The Pink Sheet Dailyの取材に対して、メルクのAdam Schechterグローバル・ヒューマン・ヘルス担当事業部門長は、同買収がシナージーを目的としたものではないと断った上で、「この買収は実際に成長を目指すもので、病院急性期治療分野で主導的地位を狙うことにある。そして新製品を上市することが狙いだ」と意欲を示している。