AZの抗血小板薬・チカグレロル フェーズ3で有効性・安全性ともに示せず
公開日時 2014/06/02 03:51
アストラゼネカ(AZ)が開発を進め、現在申請中の新規抗血小板薬・チカグレロルが、日本人の経皮的冠動脈形成術(PCI)が施行された急性冠症候群(ACS)患者対象の臨床第3相試験で、クロピドグレル(製品名:プラビックス)に比べ、出血リスク、心血管イベントの発生率ともに約1.5倍増加させ、安全性、有効性ともに示せなかったことが明らかになった。同剤は、2013年5月に申請されており、SGLT2阻害薬・ダパグリフロジン(製品名:フォシーガ)、前立せんがん治療薬・アビラテロン(製品名:ザイティガ)と並び、今年中の承認、製品の大型化が期待されていた。同社は、本誌の取材に対し、「現在申請中のため、詳細については回答できない」としている。
試験は、日本人723例を含む817例(中国人:35例、韓国人:44例)を対象に、▽チカグレロル90mg1日2回群401例、▽クロピドグレル75mg1日1回400例―の2群に分け、治療効果を比較した。主要評価項目は、投与開始12か月後の大出血、主要血管イベント(=MACE;心血管死+心筋梗塞+脳卒中の最初の発生)。登録期間は、2010年2月28日~12年1月31日まで。
患者背景は、年齢がチカグレロル群67±12歳、クロピドグレル群66±11歳、女性が95例、93例などで、両群間に大きな差は認められなかった。
その結果、大出血の発生率は、チカグレロル群11.2%(解析対象:387例)、クロピドグレル群8.4%(解析対象:380例)で、ハザード比(HR)は1.54(95%信頼区間(CI):0.94-2.53)。MACEの発生率は、チカグレロル群10.1%(解析対象:400例)、クロピドグレル群8.1%(解析対象:400例)で、HRは1.47(95%CI:0.88-2.04)で、安全性、有効性ともにクロピドグレルを上回る有用性は示せなかった。
そのほか、副次評価項目として設定された大出血+微小出血、全死亡+心筋梗塞+脳卒中の最初の発生でもクロピドグレルを上回る結果は示せなかった。
同剤は、陳旧性心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)を対象に臨床第3相試験が進行中。同社は、「試験は継続中」としており、同試験の影響はないとしている。海外では、欧米などで承認、販売されており、2013年の全世界での売上高は2億8300万ドル。