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慈恵医大・西村准教授 SGLT2阻害薬の適正使用の普及「夏場が正念場」 脱水による脳梗塞リスクに注意

公開日時 2014/06/03 03:52

東京慈恵会医科大学糖尿病代謝・内分泌内科准教授の西村理明氏(写真)は、このほど本誌取材に応じ、4月に登場した経口血糖降下薬のSGLT2阻害薬の販売各社に対して「適正使用の普及に努めている」と一定の評価を与えながらも、「脱水に伴う脳梗塞を代表とする心血管疾患リスクが高まる夏場が適正使用の正念場になるだろう」との見方を示した。

 

西村氏は、SGLT2阻害薬で最も懸念される重篤な副作用として脳梗塞を挙げた。同薬は尿中から糖を排出して血糖降下をもたらすが、その際に浸透圧利尿を伴うため、脱水を起こすリスクが高まる点が指摘されている。加えて、夏場は脱水により脳梗塞などの血栓症を発症しやすい時期でもある。SGLT2阻害薬は4月以降すでに5製品が発売され競争が激化している状況であるが、西村氏は患者選択や使用開始時の管理に十分な配慮を求めた。

 

近年発売された糖尿病薬では、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬と相次いでブルーレターが配布された経緯がある。DPP-4阻害薬では高用量SU薬と併用した際に、高齢者で重篤な低血糖を発症したケースがあった。また、GLP-1受容体作動薬はインスリン依存状態の患者におけるインスリンからの切り替えで死に至る糖尿病ケトアシドーシスが発生。いずれも患者選択や用法用量に配慮すれば防げたものであるが、西村氏は「治験結果のみのからこれらの有害事象を予測することは難しかった」と分析しており、SGLT2阻害薬の発売においても、予期せぬ有害事象の発生を視野に置いて対策を講じていくべきとの考えを示した。

 

一方で西村氏は、持続血糖モニター(CGM)を用いた研究から「SGLT2阻害薬の血糖改善効果は24時間にわたり高いポテンシャルを認めている」として、関係企業に向けて「適応を遵守して育薬に努めてもらいたい」と話した。

 

◎SGLT2阻害薬6成分 DPP-4阻害薬との合剤開発で差別化も

 

西村氏は、今後の経口血糖降下薬による糖尿病治療の展開についても触れ、「DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤や、GPR作動薬の開発動向に注目している」と語った。

 

国内の2型糖尿病患者数は推定950万人。西村氏によると、ほとんどの患者が処方対象となり得るDPP-4阻害薬に対して、肥満傾向のある働き盛りの年齢層に適するSGLT2阻害薬の対象はこの3~4割との見立てになる。この限られた市場に1年以内に6成分7製品が登場する見込みだ。成分ごとの差が少ないとされているため、DPP-4阻害薬との配合剤の有無が治療オプションの「差別化につながるのではないか」と話した。

 

DPP-4阻害薬(1日1回投与タイプ)とSGLT2阻害薬の両薬の開発を手掛けている企業は、田辺三菱(DPP-4:テネリア、SGLT2:カナグリフロジン(現時点で部会通過)〕、日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリー(同トラゼンタ、エンパグリフロジン(申請中)〕で、これらの企業で他社に先んじた配合剤戦略を取る可能性がある。

 

◎低血糖リスク低いインスリン分泌促進薬 GPR作動薬の開発にも注目

 

一方で、西村氏はDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の2剤のみでは「糖尿病治療の決め手にはならない」とも指摘する。両薬はインスリン分泌を促す膵島への直接作用を介さないためだ。その点で、開発が着手されているGPR作動薬について「糖尿病治療の要となり得る理想的な作用機序」と考えている。GPR作動薬は膵島に細胞に発現するGPRファミリーの一部を作動させ、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。既存薬で課題だった低血糖リスクも低い。

 

最も開発が先行していた武田薬品のfasiglifamは、13年12月に肝臓での副作用が問題となりフェーズ3段階で開発中止となったが、現在、日本たばこがJT-851でフェーズ2試験を実施している。西村氏は、引き続きこのクラスの薬剤の開発動向を注視しているという。

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