製鉄記念八幡病院の土橋副院長 SGLT2阻害薬と利尿薬 併用に注意を
公開日時 2014/03/27 03:52
製鉄記念八幡病院副院長で高血圧センター長の土橋卓也氏は3月25日、都内で開催されたプレスセミナー(主催:MSD)で、今後発売予定の糖尿病薬SGLT2阻害薬について画期的な新薬であるとしながらも適正使用が重要と指摘した。SGLT2阻害薬は血中の過剰な糖を尿中に排出する際にナトリウムも排出するため浸透圧利尿作用を有する。この点について土橋氏は「塩分摂取を控えた利尿薬服用中の高齢者ではナトリウムを貯める力が弱っており、脱水がより起こりやすくなる」と注意喚起した。
土橋氏はまた、SGLT2阻害薬の薬理作用は高血圧専門医の立場からも興味深いとして「血圧変動やナトリウム値、尿酸値にも影響を与えると考えられ、そうした作用に注目している」とも述べた。
土橋氏のコメントは、MSDが開催した予防医療プレスセミナーでの講演「減塩は予防医療の第一歩」での質疑に答えたもの。
◎減塩食品の認定リストを学会HPで公開
土橋氏(写真左)は講演で、日本高血圧学会の減塩に向けた取り組みを報告した。日本人の平均的な食塩摂取量が1日10g程度であるところ、学会では高血圧などの予防のため1日6g未満を推奨している。しかし、食品の栄養成分表示では食塩量の表示が義務付けられておらず、ナトリウム量のみが義務化されているのが現状だ。消費者が商品に含まれる食塩量を把握するには表示のあるナトリウム量を2.54倍して食塩相当量を算出する必要がある。食塩量の把握が困難な状況を改善すべく、学会は2011年に表示を義務化する要望書を国に提出したものの、未だ実現していない。
そこで現在学会では▽減塩食品を認定してそれらの食品リストをHP上で公開▽食塩相当量の表示がある食品を推奨―などを通し、食品産業が減塩に取り組むモチベーションを高める活動に注力している。
土橋氏は、日本人の食塩摂取源が、調味料からは4割強、漬物や肉・魚加工品など加工食品からも4割とする疫学調査の結果を引き合いに、減塩対策では個々の意識向上に加え、食品産業界による取り組みも欠かせないと指摘した。