米リリー・独ベーリンガーのSLGT-2阻害剤empagliflozin 審査完了通知で製造工場の不備指摘
公開日時 2014/03/12 03:50
米イーライリリーと独ベーリンガーインゲルハイム(BI)は3月5日、両社が共同開発している、SLGT-2阻害剤empagliflozinについて、米食品医薬品局(FDA)から、審査完了応答通知(Complete response letter:CRL)を受領したと発表した。
CRLは申請内容に疑問点がある場合はそれを指摘することとなっており、問題が解決できない場合は承認が認められないことを意味する。FDAはCRLの中で、同剤を製造を担うBIの工場の不備を挙げ、次回の承認申請前に問題解決を求めた。
リリーとBIは、可能な限り早急にCRLに対する回答を提出し、同剤を患者に提供できるようにFDAと協力する意向としている。
同剤の承認申請データは、10本の多国籍臨床試験において2型糖尿病患者合計1万3000例のデータに基づいており、これは米国でも最大規模の臨床試験の1つといわれる。
米国では、SLGT-2阻害剤として、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のInvokana(canagliflozin)がファーストインクラスの薬剤として市場に参入。アストラゼネカ(AZ)/ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)のFarxiga(dapagliflozin)、empagliflozinが次いで市場に参入するとみられていた。
ファーストインクラスの薬剤の強みを活かしたInvokanaの売上は市場で先行している。米医薬専門誌「Fierce Pharma」によると、J&Jは、同剤を糖尿病薬では米メルクのジャヌビア以来の成功を見た薬剤と位置付けているという。Invokanaは、メトホルミンあるいはインスリンを除いて新規処方の18%を占め、メルクのJanuviaやノボノルディスクのVictozaを凌駕していると同社は話している。
一方、AZは、Farxigaの販売を開始したばかりだが、最近、BMSから共同販売権を買い取ったが、独占販売を行い、投資回収に注力する考え。AZのPascal Soriot CEOは、Invokanaが先行していることを認めた上で、「(我々は)2番手での競争に直面しているが、資源や人材に投資を行い、Farxigaの成功を収める準備はできている」と意気込みをみせている。
リリー、BIのempagliflozinは今回、スタートでつまづいた格好となったが、FDAは承認申請のための新たな臨床試験の実施は求めていないため、早期の問題解決が見込まれており、市場参入の影響は少ないとの見方も出ている。