糖尿病薬Avandia 諮問委は観察研究の実施を求める
公開日時 2013/06/28 05:00
米食品医薬品局(FDA)内分泌・代謝薬諮問委員会および医薬安全・リスク管理諮問委員会は、グラクソスミスクライン(GSK)の糖尿病薬Avandia(ロシグリタゾン)の心血管安全性問題の再検討の結果、REMS(リスク評価・緩和戦略)などの使用制限解除の緩和を決定したが、安全性の懸念は払しょくされていないとし、安全性の確認のためにプラセボ対照の臨床試験の実施を求めている。
しかし、プラセボ対照比較試験は、同剤のネガティブな側面が(消費者に)浸透したことや供給が限定されていたこと、また、安全性に懸念のある薬剤を患者に服用を依頼することは倫理的に問題があることなどで実施できそうにない。
University of RochesterのArthur Moss氏は、その代替選択肢として、複雑な生物統計法の活用がロシグリタゾンと他剤とを比較する目的では、ひとつの「強化」フェーズIV観察研究を実行可能なオプションとすることを示唆している。
同氏は、RECORD試験がロシグリタゾンの服用患者ではメトホルミン/スルホニル尿素製剤服用患者と比べ、心不全以外の死亡および心血管死を減少させているようなので、同研究は心筋梗塞と心不全のエンドポイントを改善しながら、この2つの疾患を見ることになると話している。そして、「創意ある前向きかつ適切に設計されたフェーズIV試験を実施する」という。
同氏は、さらに、「このような試験方法は今後もっと出てくるだろう。なぜなら、多くの薬剤が既存の薬剤と比較するようになり、プラセボ比較をしなくなるからだ」と話す。同氏は、「このようなことはFDAに対して徐々に質問することになるだろう」とみている。しかし、FDAはこのアプローチには懐疑的にみている。FDA医薬品評価研究センターのBob Temple臨床科学部長は、疫学研究でみられる規模についての適度な効果に注目している。「我々は、ハザードレシオを1.2から1.3の範囲で見ている。だが、そうするための疫学研究の能力には懐疑的である」と話している。
FDAの糖尿病薬の心血管安全性評価ガイダンスは、製薬企業に市販後アウトカム研究におけるハザードレシオについては1.3以下を示すことを求めている。FDAは、同諮問委員会開催中に、追加データを踏まえ、同評価ガイダンスが再検討されるべきかどうかを尋ねられた。
FDAのGerald Dal Panサーベイランス・疫学部長は、観察研究は、無作為化やバイアスには影響しないと話している。
同部長は、観察研究では、一般的に問題のあるすべてのバイアスが残されることになると説明、観察研究では一般的にバイアスはつきものだと指摘する。一方、Moss氏は、プラセボ対照試験は現実的でないとし、「問題は、観察試験が適切で複雑な多変数統計を活用して考え抜かれ、その問題にこたえられるかどうかだ」と話している。
同氏は、糖尿病患者は多数存在するので、このような試験は可能だと指摘する。
FDAがREMSを緩和しなければならなくなったため、患者へのプラスの影響が予想される。
Temple氏は、「患者は(今回の見直しで)同剤の死亡率への好ましい傾向から同剤の魅力を論ずるようになるかもしれない。それが本当かどうかを確かめようと試験に興味を持つかも知れない」と話す。
一方、このような複雑な統計法を活用する試験には疑問をはさむ向きもある。国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のMichael Proschan氏は統計専門家だが、技術面で不確実性を見ているようだ。「統計家でない人は統計家よりも問題を解決しようと考えるときに複雑な統計モデルの能力に自信をもっている」と指摘している。同氏は、「(試験で)どんな統計家が一緒に作業をするか次第だ」と統計家の腕にかかっているとの見方を示した。
The Pink Sheet 6月17日号