BI・ヨアヒム・ハーゼンマイヤー取締役インタビュー エスエス製薬「期待したパフォーマンス得られていない」
公開日時 2013/05/09 05:01
ベーリンガーインゲルハイムのアニマルヘルス・コンシューマヘルスケア事業担当取締役のヨアヒム・ハーゼンマイヤー氏は、ドイツ・インゲルハイム本社での業績発表後、日本人記者らとのインタビューに応じ、日本法人のベーリンガーインゲルハイム・ジャパンの100%子会社のOTC専業会社・エスエス製薬の現状について、「現在は必ずしも期待したパフォーマンスは得られていない」との見解を表明した。
ハーゼンマイヤー氏は2012年のグローバルのコンシューマヘルスケア事業の売上高が15億500万ユーロの中でエスエス製薬の売上分はその約20%に当たる3億ユーロで、グローバルの同社OTC業績への貢献度は高いとの認識を示したうえで、「2012年のエスエス製薬の業績だけを見れば喜ばしいと言えるが、我々の目標はグローバルの平均成長率を上回ること。その意味で100%子会社化以降のエスエス製薬の成長はそれには届かず、完全にハッピーとは言えない」と語った。
また、「エスエス製薬のパイプライン構成、消費者との関係、カスタマーチェーンの構築などは徐々に展開は進んでいるものの、まだ同社は保守的な側面があることは否めず、変化には時間を要する」と分析。その上でもなお将来性については「楽観視している」と述べた。
ハーゼンマイヤー氏は、エスエス製薬の現在のパイプラインはあくまで日本向けであり、今回初めてベーリンガー本体の主力OTCである静脈血流改善薬・アンチスタックスを投入したと説明。「まずは日本国内で市場の平均成長を上回る売上伸長を達成し、次のステップとしてをエスエス製薬を軸としたアジア・太平洋州地域への展開を考えている」との展望を説明した。 一方、エスエス製薬に関しては、2011年3月の東日本大震災による東京電力・福島第一原発事故により、福島県双葉郡浪江町大字北幾世橋の同社福島工場が、災害対策基本法で設置された同原発半径20km圏内の立ち入り禁止エリア・警戒区域に入った。このため事故後は同工場での生産を千葉県成田市のエスエス製薬成田工場や奈良県の提携工場での委託生産に切り替えた。
現在の福島工場は、4月1日に浪江町が政府の警戒区域再編案を受け入れたことにより、除染後に住民などの帰還を目指す「避難指示解除準備区域」となり、日中の立ち入りが認められている。この件に関して、ハーゼンマイヤー氏は「私の理解では福島工場は完全閉鎖で、あの場所に戻ることはない」と同社幹部として初めて同工場閉鎖を明言した。