【SABCSリポート】前治療歴ありの局所進行または転移性乳がん エリブリンはカペシタビンより有意な生存延長示せず
公開日時 2012/12/20 05:00
アントラサイクリン系とタキサン系の前治療を受けたことがある、局所進行または転移性乳がん患者の一次、二次、三次治療として、エリブリンとカペシタビンの有効性を比較検討した結果、全生存(
OS)と無増悪生存(PFS)のいずれにおいても、エリブリン投与による、有意な延長はみられなかった。同剤の臨床第3相試験の結果から示された。一方、探索的解析から、エリブリンのベネフィットは、トリプルネガティブとER陰性、HER2陰性でみられる傾向も指摘された。12月5~8日まで米・サンアントニオで開催された、第35回サンアントニオ乳がんシンポジウムのGeneral Sessionで米Norris Cotton Cancer CenterのPeter Kaufman氏が7日、発表した。
エリブリンは、海綿天然物であるハリコンドリンBを構造的に単純化した合成類似物。強力な前治療を受けている転移性乳がん患者で生存ベネフィットを示す唯一の化学療法薬で、2~5種類の化学療法で前治療歴のある症例を対象としたEMBRACE試験では、治験医師による選択療法を受けた群との比較で、全生存を有意に2.5カ月間延長したことが明らかになっている。
今回の試験では、アントラサイクリン系とタキサン系の治療を受けたことがあり、化学療法の前治療歴が3種類以下(進行乳がん治療では2種類以下)の局所進行もしくは転移性乳がん患者1102例が対象。▽エリブリン投与群(1.4mg/㎡を2~5分で静注、1日目、8日目、21日毎)554例▽カペシタビン投与群(1250mg/㎡、1日2回経口投与、1~14日、21日毎)548例――に1:1の割合で割り付けた。主要評価項目はOS、PFS。あらかじめ、地域とHER2ステータスで階層化し、解析を行った。
患者背景は両群で大きな差がみられず、進行乳がんの治療として受けた化学療法の前治療歴は、1種類がエリブリン群で50%、カペシタビン群で53%、2種類が28%、27%だった。内臓転移は84%、88%。HER2陰性は68%、69%、ER陽性は47%、51%、PR陽性は41%、43%、トリプルネガティブは27%、25%だった。
治療の結果、OSはエリブリン群で15.9カ月、カペシタビン群で14.5カ月(ハザード比(HR):0.879、95% CI: 0.770 – 1.003、p=0.056)で、群間差はみられなかった。PFSにおいても群間差はなく、独立機関によるレビューではエリブリン群で4.1カ月、カペシタビン群で4.2カ月(HR:1.079、95% CI: 0.932 – 1.250、p=0.305)、治験医師によるレビューではそれぞれ4.2カ月と4.1カ月(HR:0.977、95% CI: 0.857 – 1.114、p=0.736)だった。
奏効率は、治験医師によるレビューで、客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)がエリブリン群16%、カペシタビン群20%(p=0.100)、臨床的有効率(完全奏効+部分奏効+6カ月以上の疾患安定)は33%、34%だった。
一方、あらかじめ特定したサブ群での探索的解析を行った結果、HER2陰性(755例)とER陰性(449例)、トリプルネガティブ(284例)の患者で、エリブリンによるOSのベネフィットが得られる傾向がみられた。HER2陰性ではカペシタビン群の13.5カ月に対し、エリブリン群15.9カ月(HR:0.838、95% CI: 0.715 – 0.983)、ER陰性では10.5カ月、14.4カ月(HR:0.779、95% CI: 0.635 – 0.955)、トリプルネガティブは9.4カ月、14.4カ月(HR:0.702、95% CI: 0.545 – 0.906)だった。
治療期間(中央値)はエリブリン群4.1カ月、カペシタビン群3.9カ月、治療サイクル(中央値)はエリブリン群6サイクル、カベシタビン群5サイクルだった。
重篤な有害事象の発生率は、エリブリン群で17.5%、カペシタビン群で21.1%。治療関連の有害事象で減量したのはエリブリン群31.1%、カベシタビン群31.3%、致死的な有害事象は4.8%、6.6%に発生した。血液関連の有害事象はエリブリン群に多く報告され、好中球減少が54%、白血球減少は31%、発熱性好中球減少は2%だった。非血液関連の有害事象では、手足症候群、下痢がカペシタビン群でより多く報告され、末梢感覚神経障害も報告された。