【ISC事後リポート】ダビガトラン投与中の急性虚血性脳卒中発症患者 大部分が正常な血液凝固パラメーター示す
公開日時 2013/02/27 08:00
経口抗凝固薬・ダビガトランエテキシラート(以下、ダビガトラン)を投与された患者で急性虚血性脳卒中が発生した患者の大部分が、血液凝固のパラメーターが正常だったことが、同剤の実臨床でのデータを後ろ向きに解析した結果から分かった。2月6~8日まで米・ホノルルで開催された国際脳卒中学会(ISC2013)で、8日に開かれた「Cerebrovascular Occlusive Disease Oral Abstracts III」で、米国Kaiser PermanenteのNavdeep Sangha氏が報告した。
ダビガトランは米国で2010年10月に、心房細動に起因する脳卒中予防の適応で承認されている。しかし、投与中にもかかわらず、急性虚血性脳卒中を発生した患者について、実臨床における検査所見などの患者特性はまだ十分に分かっていないのが現状だ。
同解析では、カリフォルニア州とテキサス州の大規模な脳卒中センター3施設のデータベースから、2010年12月~12年8月まで、ダビガトラン投与中の患者で急性虚血性脳卒中を発生した患者の記録を抽出した。血液凝固関連のパラメーター、クレアチニン、eGFR、t-PA静注療法または動脈内血栓除去の有無、急性虚血性脳卒中発症前にダビガトランの投与中止期間などを検討した。
該当する対象患者は32例で、このうち16例(50%)が女性だった。平均年齢は70.6歳だった。ダビガトランの投与量に関するデータが入手可能だったのは17例で、150mg x 2回/日が14例(82%)、75mg x 2回/日が2例(11.8%)、75mg x 1回/日が1例(5.8%)だった。
血液凝固関連のパラメーターは、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT、中央値)が37.1秒(範囲:23.6 - 200秒)で、ほとんどの患者が正常値範囲内であった。INR(中央値)は1.1(0.89 – 1.95)、クレアチニン(中央値)が1.1(0.7 – 1.6)、GFR(中央値)は64ml/分/1.73㎡(32 – 97)だった。
また、急性虚血性脳卒中前のダビガトランの投与期間のデータが入手可能だった19例のうち、16例は発生直前までダビガトランが投与されていた。そのほか、48時間前の投薬中止、72時間前の投薬中止、2週間前の投薬中止が1例ずつだった。
t-PA静注療法を受けたのは3例で、aPTTはそれぞれ26.7秒と、32秒、35秒だった。このうち2例は、動脈内血栓除去療法も受けていた。動脈内血栓除去療法だけを受けたのは1例で、aPTTは27秒だった。症候性の出血性変化を示した患者はいなかった。
Sangha氏はこれらの結果から、「患者の大部分はダビガトランの投薬中に急性虚血性脳卒中を発生しており、半数以上の患者はINRとaPTTが正常値範囲内であった」とまとめた。その上で、ダビガトランやその他の経口抗凝固薬の使用が増加する中で、「今後はこれらの患者をどのように管理していくかまとめた、ガイドラインの作成が不可欠になるだろう」との見解を示した。