NICEガイダンス案 乳がんにAvastin推奨せず
公開日時 2012/04/25 04:00
英国立臨床評価研究所(NICE)は、4月18日、スイス・ロシュの分子標的抗がん剤Avastin(ベバシズマブ)について、転移乳がん治療において、カペシタビンとの併用を第1選択薬として推奨しないとするガイダンス案を公表した。
NICEの独立評価委員会(IAC)は、ベバシズマブとカペシタビン併用とカペシタビン単剤との臨床効果のエビデンスを検討した結果、併用群はカペシタビン単剤よりも無病生存率(中間値)が2.9か月延長されたことを示したが、そのベネフィットが全生存率改善につながるかどうかは不明確とし、同時に、単剤療法の場合よりQOL(生活の質)を改善するかを示すデータもないと指摘した。IACはこの不明確さを考慮すると、限りあるNHS (国民保健サービス)の資源を使用できないと結論付けた。
IACは、不明確さが原因で、カペシタビン単剤とベバシズマブとカペシタビン併用で獲得されるQALY(生活の質調整生存年)当たりの最も望ましい増分費用対効果(ICER)を計算できなかったとしながらも、患者集団全体のICERは、タキサン系抗がん剤で前治療を受けた患者サブグループから判断して、QALY当たりの最も望ましいICERの82000ポンドよりも高くなることを確信したため、転移乳がんの第1選択薬として使用することは不適切と指摘した。
ベバシズマブの薬価は100mg バイアルが242.66ポンド、400mgバイアルが924.66ポンド(いずれも付加価値税除く)。同剤の経費は、体重72.1kgの患者で3週ごとに15mg/kg投与により約2576.78ポンド。月平均、約3689.12ポンドとなる。
NICEは、製造業者(ロシュ)は、割引価格で薬剤を提供する「患者アクセススキーム」(Patient Access Scheme)を保健省(DOH)に提出していないとしている。
NICEのAndrew Dillon専務理事は、「我々は、効果的な治療はQOLを向上させながら出来るだけ延命させることが必要だと考えているが、IACに提出されたエビデンスでは、ベバシズマブはこのどちらも示さなかった」と話した。
英国では、毎年、48000人以上の女性と約300人の男性が乳がんと診断されている。NICEは同ガイダンス案についてのパブリックコメントを4月18日から募集している。なお、同剤は米国において、2011年11月、FDA(食品医薬品局)は、転移乳がんの適応では治療効果が確認できないことを理由に承認撤回を行った。