財務省と厚労省の間で次期診療報酬改定の改定率をめぐる駆け引きが始まっている。長妻昭厚労相が上昇幅を抑えながらもネットでプラス改定を目指す発言をしていたのに対し、財務省は先週18日に2010年度予算編成に向けた医療予算の考え方を提示し、薬価の大幅引き下げと診療報酬の配分の見直しなどで改定率をネットでマイナスとする方針を打ち出した。同日記者会見した野田佳彦財務副大臣は、「大幅に歳出削減が見込める部分は診療報酬だと思っている」と述べ、年末の予算編成に向けて薬価・診療報酬に切り込む姿勢を鮮明にした。
次期診療報酬改定をめぐっては、民主党政権に代り、自公政権時代の社会保障費の自然増2200億円圧縮のしばりから開放されていただけに、医療現場からはプラス改定への期待が高まっていた。しかし、今回示された考え方は、自公時代と何ら変わらぬ財務省の姿勢を見せ付けるものとなった。
次期改定について財務省のスタンスは、国民の負担増につながる医療費全体の増額を回避すべきというものだ。仮に診療報酬を1%引き上げると3400億円の医療費増となり、その半分の1700億円が保険料負担になると指摘する。逆に1%引き下げれば1700億円の保険料負担が軽減されるという。
野田副財務相は、「医療費増は保険料負担も上がる。患者負担も増える。どれをとっても良くないことだ」と述べ、薬価、診療報酬を合わせたネットの改定率をプラスとすることに慎重姿勢を示した。その上で改定作業に際しては、「診療報酬本体は底上げでなく大胆な配分の見直しを。薬価は先発品の価格を後発品並みに下げるべき」と述べた。20日には藤井裕久財務相も閣議後会見で、次期診療報酬改定は医療偏在と薬価の引き下げが焦点になるとの見方を示した。