塩野義 米国での抗肥満薬S-2367開発 併用の追加試験実施へ
公開日時 2009/11/05 04:01
塩野義製薬は11月4日、次期主力品として米国でフェーズ2bまで進めている抗肥満薬S-2367について、抗肥満薬オルリスタットとの併用による追加試験を行うことを明らかにした。米国でより高い効果を示す開発競合品の治験データが相次いで報告されたことを受けた対応。フェーズ2aにステップアップさせた日本では単剤開発を続ける。
手代木功社長は同日の10年第2四半期決算説明会で、S-2367の進捗状況に関する記者の質問に対し、開発競合品の治験結果から、抗肥満薬開発では体重をより強く減少させる効果が必要と判断し、開発・販売のパートナー探しの交渉を中断していると説明。現在はオルリスタットとの試験にリソースを振り向けて取り組んでいるという。来年10月以降に結果を出す方針。そのため当初12年ごろとしていたS-2367の米国発売は遅れることになりそうだ。
オルリスタットとの組み合わせは、動物試験の結果から判断した。ただ他剤を含め合剤を視野に入れており、動物試験の結果を踏まえ組み合わせる薬剤を柔軟に検討する。競合他剤に比べS-2367の高い安全性を生かした開発を進めたい考え。海外では当面は、フェーズ1入りしたS-2367のバックアップ化合物のS-234462と並行して開発を進める姿勢を示した。
同日は、抗インフルエンザ薬ペラミビルを10月に厚生労働省に承認申請したことを発表した。効果は経口薬のタミフルと同程度。点滴薬で、経口できない患者や確実に必要量を投与できるのが特徴。承認時期は未定だが、「3月~4月までの間に50~100万本を作れるように準備しなければならない」(手代木社長)としており、早期承認を視野に、承認後の迅速な発売に向け準備を進めているという。新型インフルエンザの大流行への懸念が高まっていることから、フェーズ3の結果が得られてから約3ヵ月というスピード申請となった。
決算では、高脂血症治療薬クレストールの国内売上や同剤のロイヤリティー収入の大幅増に加え子会社の米サイエル社の売上が加わって2桁増収。一方で研究開発費やサイエル社の販売費が増えたことで減益となった。通期は、前期にあったサイエル子会社化に伴う費用が発生しないため増収増益を計画する。同社長は、説明会で、抗生物質の減収を、クレストールの増収、イベルタン(ARB)、ピレスパ(特発性肺線維症治療薬)と新薬の相次ぐ投入により増収を確保できる体制になってきたことを強調した。
【連結業績(前年同期比)通期予想(前年同期比)】
売上高 1326億3900万円(26.3%増)2800億円(23.1%増)
営業利益 178億3800万円(3.4%減)600億円(87.4%増)
経常利益 163億9700万円(13.6%減)580億円(81.2%増)
純利益 115億9100万円(2.1%減)350億円(123.5%増)
【売上高(前期実績)通期予想(前年実績)、億円】
クレストール 115(83)230 (177)
フロモックス 113(121)240(273)
リンデロン等外用 51(52)95 (96)
オキシコンチン 42(40)88 (77)
フルマリン 47(55)90 (101)
クラリチン 34(33)97 (96)
塩酸バンコマイシン34(46)65 (81)
イムネース 26(36)46(61)
フィニバックス 18(13)40 (29)
イルベタン 12(10)35 (12)
ディフェリン 10(―)28 (12)
ピレスパ 6(―)17 (2)
ロイヤリティー収入 240(178)520 (368)
うちクレストール 225(166)495 (343)