ブランド品マーケティングは電子カルテで大きく伸びるか?
公開日時 2013/05/15 05:01
電子カルテ(EHR)の活用は、ブランド品(先発品)製薬企業にとって、医師に対する臨床的意思決定の支援や患者支援サービスを強調することによって、ジェネリック医薬品との差別化を行う、販促の重要な手段になりえそうだ。PDRNetworks社が4月17日に開催したPharmEHR Summitと題するセミナーで多くの論者が明らかにした。
バイエルヘルスケアのDavid Zied氏は、同サミットのパネルディスカッションで、「EHRのチャネルは、医薬マーケティングで今日、本当にリアルで重要なチャネルだ」と指摘したうえで、「これは、我々に全く別の観点からのものの見方をする大きな機会を与えてくれる」と説明した。
同氏は、企業経営者がマイクロソフトのOutlookソフトウェアと「結婚」しているように医師らはEHRと結婚していると指摘、医師にとってEHRは不可欠であるとの考えを示した。同氏は、「われわれの責務は、如何に正確に、医師が利用できる情報をEHRのシステムに統合できるかを理解しようとすることだ」と話し、特に、バイエルは、同社が持つエビデンスなどの情報を含め、EHRについての臨床的意思決定支援機能の一環として、その情報を医師に伝達する方法を模索しているとした。
また、ブランド品企業に対して訴えていることに、EHRは、ヘルスケアが提供される時点で、医師は情報が入手できるということがある。これは、その情報が患者のアウトカムに実際に影響を与えうる面を持っている。
アストラゼネカのDavid Guiga氏は、EHRは、製薬企業が医師に医薬品に伴って支援サービスを提供することを知らせる手段だと指摘した。同氏は、「我々が患者の受診時に医師を訪問した際、医師らに薬剤以上のものを<処方する>(サービスをする)機会を持つことを知らせることが出来る」と話した。それは、単に薬剤の処方以外の薬剤アドヒアランス・プログラムや一般的な健康改善プログラムになると説明した。
HERを、メッセージを伝達するツールとしてみているのは製薬企業ばかりではない。米食品医薬品局(FDA)もリスク評価・緩和戦略(REMS)やラベルの更新情報のような情報を医師に伝達する機会として見ている。PDR Networks社も販売業者への追加サービスとして提供している。これは、自己負担額の一部支援や自己負担分クーポンなどのサービスについての伝達に役立つ。
しかし、ブリストルマイヤーズスクイブのNancy Phelan氏は、「(これを進める上での)課題のひとつは、処方される薬剤に伴う追加サービスにアクセスするためにEHRがどのように使用されるかを説明するために医師にアプローチするかである。つまり、MRとの関係を通して満たしうる行動である」と指摘している。
グラクソスミスクライン(GSK)の代表者は、EHRの使用が高まっている状況でのMRの活用の方法について概要を説明した。
ファイザーのMary Varghese氏は、ブランドメッセージングは歴史的に臨床上の特徴やベネフィットに絞って構築されてきたと説明した。しかし、ヘルスケアシステムが進化したことにより、アウトカムの改善や有効性の向上、患者の関与などについての供給者の説明が一層重視されるようになってきたため、EHRはその問題を解く重要な手段となりつつある。
Varghese氏は、「我々がやらなければならないことのひとつは、あなた方のブランドについて価値のある提案を再定義することだと思う。もはや臨床的観点からの特徴やベネフィットを定義することではない」と主張した。同氏は、そのことが価値のある提案についての明確なデータを生み出すためには、どのように臨床試験をデザインするのかという流れになるだろうことを示唆した。同氏は、「これらは全て、EHRがヘルスケアにおいて何を行っているのかを暗示している」と話している。
バイエルヘルスケアのZied氏は、「ブランド品製薬企業として我々が持てる機会のひとつは、ジェネリック医薬品企業が明らかに提供できない多くの付加価値サービスを提供できるという事実だ」と指摘した上で、「これらが、我々が医師に認知させようとしていることだ。あなた方は、業務全体の流れのなかで包括的なサービスに基づいて、もっと(HERに)執着できるかもしれない。なぜならば、医師らは、EHRを使う医療現場にいるのだから」と説明した。
The Pink Sheet 4月22日号