PhRMA アルツハイマー病治療薬開発の困難さ指摘
公開日時 2012/09/26 04:00
米国研究製薬工業協会(PhRMA) は、会員企業が認知症治療薬97剤の開発に着手していることを明らかにした。一方で、開発に際し、会員企業が1998年~2011年までに、101の認知症治療薬候補が開発に失敗したことを明らかにし、治療薬開発の難しさを指摘した。
これは、9月13日に公表された、アルツハイマー病治療薬開発の現況と経緯などを解説した報告書「アルツハイマー病研究:挫折から足がかりへ(Alzheimer’s Research: Setbacks and Stepping Stones)」と、「開発中のアルツハイマー病治療薬(Medicines in Development for Alzheimer’s Disease)」新版から分かったもの。
“アルツハイマー病研究:挫折から足がかりへ”は、アルツハイマー病治療薬の研究・開発を前進させるための障害や、研究の進歩が果たす役割などを明らかにすることを試みたもの。要約、人間へ負担、経済コスト、ADへの理解、AD治療薬開発への取り組み、今日の治療、研究の挫折と(明日への)足がかり、技術革新の続行など10章で構成されている。
その中で、PhRMA会員企業が現在100剤近くのアルツハイマー病治療薬を開発している一方で、1998年~2011年までに、101の認知症治療薬候補が開発に失敗していると指摘した。
PhRMAのJohn Castellani理事長兼CEOは、「アルツハイマー病研究の挫折は、臨床試験に携わる科学者を含め、多くの人々を失望させている。しかし、失敗に終わった試みは、非常に理解が難しい疾患についての理解を進めるための重要な足がかりになる」と述べた。その上で、「現実には、アルツハイマー病に対する新薬開発における失敗は、科学を前進させる新しい情報を提供することで、新たな研究方法を生むことに役立っている」と開発失敗の意義を説明した。
一方、“開発中のアルツハイマー病治療薬新版”では、PhRMA会員企業が開発中(申請中含む)の認知症治療薬(アルツハイマー病治療薬83剤、認知障害治療薬12剤、認知症治療薬2剤)は97剤に達したことを報告している。
注目の新規治療としては、アルツハイマー病の前駆症状である軽度認知障害に対して血液脳関門(BBB)を通過できる経鼻吸収剤、遺伝子治療、全身免疫反応を起こさず抗体産生を誘発する合成ワクチンなどがあるとされている。
Castellani理事長兼CEOは、新規治療について期待感を示した上で、この疾患を克服する上で、「ヘルスケアシステムに莫大な費用をかけないですむように、政策立案者は、患者のための医療の進歩やバイオ・医薬品産業のようなイノバティブな成長エンジンの育成をする政策を支持しなければならない」と政治家への要望も付け加えた。