2010年米医療用薬市場 前年比2.3増の3074億ドル
公開日時 2011/04/22 04:00
2010年の米国医療用医薬品市場は対前年比2.3%増の3074億ドルとなったことが分かった。IMS Institute for Healthcare Informaticsが4月19日、同年の市場概要に関する報告書を公表した。
◎過去5年間で2番目の低成長
2.3%の成長率は2009年の5.1%よりも低く、過去55年間で2008年の1.8%に次ぐ2番目に低い伸びだという。2009年は、新型インフルエンザの流行と後発品の使用が大きく拡大したことが5.1%成長の理由と見られるが、2010年はその反動が表れた面もあるようだ。
医療用医薬品の年間1人当たり費用は2009年から6ドルアップの898ドル。医薬品価格では、全体の60%を占める経口剤・吸入剤が先発品・後発品を含め、前年比0.1%ダウン、28%を占める注射剤・点滴剤が5.7%上昇。先発品市場全体は仕切り価格の変更により、前年の158億ドルアップと比べ微増の166億ドル上がった。
◎2010年の新薬上市は44品目 薬剤費割合で先発品が0.7%減少
2010年に登場した新製品(先発品)は、44品目。同製品のうち10品目は、多発性硬化症(MS)の新規経口剤、骨粗鬆症・(がん)骨転移治療薬、モノクローナル抗体、前立腺がん治療用ワクチンなど新規作用機序を持つ画期的医薬品。さらに5品目の希少疾病薬や既存作用機序を持った新薬6品目があり、関節リウマチ(RA)、前立腺がん、髄膜炎などの分野で新たなオプションを提供した。
先発品と後発品の薬剤費の割合では、先発品が0.7%減少、後発品は小売薬局処方せん調剤レベルでは、78%を占めるまでになった。
◎薬剤費トップは抗がん剤の223億ドル
薬効別の薬剤費のトップ5は、①抗がん剤223億ドル、②呼吸器疾患薬193億ドル、③脂質調整剤(高脂血症薬等)187億ドル、④糖尿病薬169億ドル、⑤抗精神病薬161億ドル―となった。このうち、成長率が一番高いのは糖尿病薬の12.5%、低いのは、脂質調整剤の0.9%だった。
IMSのMichael Kleinrock研究開発部長は、今回の調査結果について、「2010年は医師や患者のオプションが一層拡大したこと、主力先発品の特許切れや経済の低迷で受診が減少したことで医療費の伸びがかつてなく鈍かったことなどが明らかに示された」と分析している。そのうえで、今後の見通しについて、「受診率の低下や新規治療法の登場の長期的影響がどのように出るかはまだ不明だが、注視したい」と話している。