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日本リリー 小児用医薬品の世界同時開発にアクセル カギ握る専門集団“ペディアトリックドラッグハブ”

公開日時 2024/11/08 05:30
日本イーライリリーは、小児用医薬品の世界同時開発に注力する。今年に入り、3製品4適応で小児適応の承認を取得した。小児医薬品の開発にアクセルを踏む鍵を握ったのが、組織横断的に構成する専門集団“ペディアトリック・ドラッグ・ハブ(Pediatric Drug Hub)”だ。開発だけでなく、薬事やマーケティング、疫学など様々な専門家が集い、専門性を発揮することで、小児治験をめぐる課題を克服。いまや、日本を国際共同治験に組み込んだ方が開発も早く進む、とグローバル本社に認識されるまでの実績を積んできたという。日本イーライリリー研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部の坂口佐知チーフメディカルオフィサーと、髙宮志穂薬事本部製販後薬事部長に同社の取組みを聞いた。

◎「日本も組み込んだ方が開発早く進む」との認識に 日本が患者登録早い実績も

日本イーライリリーの小児用医薬品の治験数は18~19年に一気に増加した。現在も21プロジェクトが計画中または進行中という。世界同時開発戦略の下、日本も国際共同治験に組み込まれているためだ。坂口氏は、「2010年代は、欧米だけで治験はできるが、日本の患者さんに早く薬を届けるために国際共同治験に入れてくださいという状況だった。しかし、いまは世界全体で開発を推進していくために、日本も入ってほしいという状況に移行しつつある」と話す。

一般的に日本での小児治験をめぐっては、患者数の少なさに加え、治験件数も少なく、治験実施施設も経験が少ないなど、治験環境もハードルとして指摘されている。しかし、「欧米の施設と比べて日本で登録された患者さんが少ないということは全くない。むしろ日本の施設で先に予定していた患者数の登録を終え、他国を手伝うようなことも発生している」と胸を張る。日本の臨床試験の質の高さも評価が高いという。こうした“実績”を踏まえ、「日本は非常に開発で重要なポジションを占めている」と強調。特に、「投与法や疾患など難しい治験であるほど、日本も組み込んだ方が開発が早く進む、治験がうまくいくという認識になっている」と自信をみせる。

◎組織横断的で、かつ疾患領域横断的な“ペディアトリック・ドラッグ・ハブ”が貢献

情報共有や専門医同士のネットワークを活用するなど「あらゆる工夫」により、治験実施を阻む課題の克服し、“実績”に貢献したのが、18年に始動した“ペディアトリック・ドラッグ・ハブ(Pediatric Drug Hub)”と呼称する専門集団だ。研究開発本部だけでなく、メディカルやマーケティング、薬事、統計解析、PK/PD、疫学の専門家など様々な専門性を有するメンバーが集う。高宮氏は、「組織横断的で、かつ疾患領域横断的に部門の代表の人に集まっていただいて活動しているところが特徴」と話す。

発足当初は患者登録にフォーカスした活動を進めてきたが、「よりスムーズに治験を実施し、製品価値を最大化できるかという幅広い活動へと変わってきている」と説明。小児治験の経験の少ない人が多い中で、治験で得られた成功や失敗を共有し、次の開発に生かしているといい、「活動自体も集まってきたメンバーが、自発的にボトムアップで活動を考えて展開をしてきている」と話す。

◎薬事、マーケティング、疫学から最初に開発プランにアドバイス 開発スピードも向上

小児医薬品をめぐっては、24年度薬価制度改革で新薬創出等加算の対象となったほか、加算率の柔軟な判断など評価の充実が図られている。一方で、こうした加算の取得などを見据え、薬事と薬価戦略を連動させて立案させる重要性も高まっている。坂口氏は、「薬価もそうだが、実際に薬が市場に出たときに医師が使用できる環境を整えることが必要」と強調。「開発の観点だけでは、承認パッケージが足りない、上市したときに実臨床では使いづらいということが起こり得る。開発だけの目線だけでなく、薬事やマーケティング、疫学など様々な観点から、最初の段階で開発プランにアドバイスをもらうことが大事だ。開発のスピードやタイミングにも大きく影響してくる」と話す。例えば、治験の対象により添付文書の記載が変わるなど治験デザインの影響は大きい。こうした観点からも、様々な専門家が集うペディアトリック・ドラッグ・ハブの有用性を強調する。

◎グローバルにも“ワンボイス”で日本から制度情報発信 実績と同時に信頼を構築

グローバルとの連携もペディアトリック・ドラッグ・ハブを通じて、密に取る。グローバル部門には小児の専門家が各部署におり、ペディアトリック・ドラッグ・ハブのメンバーを通じて連携している。「小児の専門家が集まるミーティングなどの機会では、日本の薬価制度改革の情報を伝えるなど、つながりを作っている」(坂口氏)。

日本の薬事・薬価制度を説明する資料などは、ペディアトリック・ドラッグ・ハブのメンバーで共有し、ワンボイスで、かつ迅速なグローバル本社への説明を可能にした。「グローバル本社もわかりやすいし、安心感がある。前に進みやすい。日本として、実績と同時に信頼も積み上げていく中で、皆が共有する部分があったことは大きかった」と話す。グローバル本社から見ても、「ペディアトリック・ドラッグ・ハブに連絡すれば、日本の小児に関する情報が得られる」ことで、グローバル本社に日本への理解を深めてもらうことにも一役を担っている。’

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