武田薬品、アステラス製薬、三井住友銀行が出資する合弁会社「シコニア・バイオベンチャーズ株式会社」（本社：神奈川県藤沢市）が設立された。初期の創薬研究からスタートアップの立ち上げまで包括的にサポートするインキュベーション機能を担う。開発戦略やデータ取得など産業界のノウハウや強みを生かすことで、「成功確率の高い創薬シーズ」を生み出したい考え。革新的な創薬シーズで研究開発資金や人材を呼び込み、グローバル展開するスタートアップを複数生み出すことも視野に入れる。同社は、「まずは３年以内に最初のスタートスタートアップ設立を目指す」としており、日本発の創薬エコシステム活性化へアクセルを踏む。

◎創薬イノベーションをもたらす人材と技術を日本から世界へ届ける

設立する合弁会社は、「創薬イノベーションをもたらす人材と技術を日本から世界へ届ける」をビジョンに、「医療を変える革新的な創薬シーズや技術を発掘し、スタートアップの創出を通じて世界につなげる」をミッションに掲げる。

創薬の実用化をめぐっては、基礎研究から実用化までが切れ目なく効率的につながっていない、いわゆる“死の谷”があることが指摘されている。特にアカデミア初の創薬シーズなどでは、初期の創薬研究で実用化を見据えたデータ取得や開発戦略がなされていないことなどが課題とされており、革新的なスタートアップが欧米に比べて少ないことも指摘されている。

◎開発早期からスタートアップの立ち上げまで包括的支援で“死の谷”乗り越える

同社は開発早期から産業界の目線を入れ、ターゲットとする疾患や開発戦略の見直し、データの取得など実用化を見据えて行うことで、成功確率の高いシーズを生み出すことを視野に入れる。そのうえで、さらなる研究開発資金および経営人材を集め、新たな革新的なスターフアップ企業を創出することまで包括的にサポートすることで、死の谷を乗り越え、最短距離で実用化にたどりつきたい考え。

創薬シーズについては、製薬企業に眠るシーズを各社の事業開発担当との情報交換を通じて、シーズの探索および提携の機会を探る考え。アカデミアについては技術・創薬シーズに関して一定のクライテリアを設けた上で、革新的な研究やアイデア、技術創薬シーズの探索を行うとしている。スタートアップの立ち上げ時期については、臨床開発を視野に入れた研究ステージのステップアップ、大きな研究資金獲得のタイミングを考慮する方針。

◎グローバルで競争力のある創薬シーズを持つスタートアップ企業を複数創出へ

設立当初に掲げる目標は、「まず3年以内に最初のスタートスタートアップ設立」。さらに、グローバルで競争力のある創薬シーズを持つスタートアップ企業を複数創出し、グローバル上市やグローバル展開を目指す。

◎武田・アステラス「スタートアップとの提携やアセット導入でビジネス拡大の可能性」

合弁会社に出資する武田薬品とアステラス製薬は、「スタートアップとの提携の機会や、アセット導入から、各社の事業機会の拡大につながる可能性がある」と判断。三井住友銀行は、「スタートアップの成長ステージに合わせ、金融面からサポート機会の創出につながることが予想される」としている。

同社の代表取締役社長 Founder CEOに就任した藤本利夫氏（アイパークインスティチュートの代表取締役社長）は、「開発早期から企業目線でシーズの評価をし、選択したシーズを基に会社を設立し、世界で資金調達を行って開発を展開する。活動を通じて日本発のイノベーションを世界に届けていきたい」と述べた。

武田薬品の梶井靖R&D ジャパンリージョンヘッドは、「シコニア社の設立は、日本の創薬エコシステムをさらに発展させ、世界の創薬をリードしていくための大きな一歩。長年にわたる国内外のベンチャーおよび起業家を支援してきた経験を活かし、優れた創薬シーズをグローバルに展開できるスタートアップ企業がシコニア社から創出されるよう支援していく」とコメント。

アステラス製薬の塚本一成事業開発部長は、「シコニア社が産官学の多様なプレーヤーと共に日本の創薬エコシステムを活性化し、そのグローバル展開を通じて世界中の患者に革新的な治療薬を届けることを大いに期待している。これまでに世界で培ってきた創薬やビジネスのノウハウとネットワークを基に、シコニア社を多角的に支援する」としている。

三井住友銀行は「シコニア・バイオベンチャーズを通じ、新しい医薬品の開発を支援することで新技術や新産業の育成を促進し、日本の再成長をサポーフしていく」とコメントを寄せた。

同社は、３社が今年４月に締結した基本合意契約に基づき、今年８月に設立。資本金は約６億円（資本準備金含む）で、湘南ヘルスイノベーションパーク（湘南アイパーク）に本社を置く。