塩野義製薬・手代木社長 ゾコーバのHR試験 主要評価項目未達で24年度売上高予想は4550億円に
公開日時 2024/05/14 04:51
塩野義製薬の手代木功代表取締役会長兼社長CEOは5月13日の2023年度決算説明会で、経口新型コロナ治療薬エンシトレルビル(国内製品名:ゾコーバ)のグローバル第3相SCORPIO-HR試験(以下、HR試験)結果について、主要評価項目(症状改善効果)で統計学的有意差を示せなかったと発表した。同社は23年6月に公表した改訂中計で、23~25年度を「エンシトレルビルを中心にグローバルでの大きな成長を実現する3年間」と位置づけ、25年度の売上目標を5500億円と設定しているが、この日、HR試験結果を受けて開示した24年度予想は4550億円となっている。手代木社長は海外エンシトレルビルについて、「24年度内に承認を頂けるかというと、それはなかなか難しい。現時点では販売予算に含めていない」と述べた。
HR試験は、重症化リスク因子を持つ患者を含む外来患者を対象としたグローバル第3相無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験。同社は、24年1月末の23年度第3四半期(23年4~12月)決算説明会で、23年12月に約2000例の症例登録が完了し、4月にもトップライン結果を公表する予定と説明。また、米国では、24年度第1四半期からローリング・サブミッションを開始する予定で、FDAと調整中と説明していた。この日、HR試験の結果について、主要評価項目である「15症状が消失するまでの時間」では、統計学的な有意差が認められなかったこと、また、主な副次評価項目の一つである「12週時点でのLong COVID(後遺症)の発現率」では、全体として差は認められなかったことなどを明らかにした。今後、各規制当局(米国・アジア)との協議を開始する予定という。
◎COVID-19関連製品+インフルファミリー 修正予想の売上高886億円に対し734億円
23年度の連結売上高は前期比2.0%増の4351億円となり、前期に日本政府によるゾコーバ購入で1000億円を計上したにもかかわらず、その一過性要因の影響を吸収し、2年連続で過去最高を更新した。ただ、同社修正予想(23年10月末)の4500億円には149億円届かなかった。連結売上の内訳を見ると、国内医療用医薬品は一過性要因(22年度のゾコーバ政府購入1000億円、23年度のADHD治療薬ライセンス移管に伴う一時金受領250億円)を含め15.9%減の1511億円となり、修正予想の1670億円に対しては159億円の未達だった。この未達は、ゾコーバと抗インフル薬ゾフルーザを含むCOVID-19関連製品+インフルエンザファミリーの売上が、修正予想の886億円に対し734億円と152億円届かなかったことが要因。新型コロナ治療薬の患者自己負担増が影響したとみられる。
ゾコーバを含む新型コロナ治療薬の患者自己負担は、23年度4~9月にはなかったが、10月から最大9000円に引き上げられ、24年4月からは公費負担が終了し、通常の自己負担額(ゾコーバの場合、1治療3割負担で1万5000円超)となった。この経口新型コロナ治療薬3剤の処方率への影響について、手代木社長は「一番ピークだった23年9月末に22~23%だったのが、24年3月末には12~13%まで落ちてしまい、この4月の段階では8~9%くらいだと思う」と説明した。
◎「ゾコーバに対する評判は極めて良い」 どう処方率を上げていくかが大きな課題
24年度のゾコーバとゾフルーザを含むCOVID-19関連製品+インフルエンザファミリーの売上予想は、67億円増の801億円。手代木社長は「4月以降、どれくらい処方が動くか不安があったが、極めて堅調に推移しており、経口コロナ薬の中のシェアは、もともと1位だが、かなり強含みで推移している。5月以降もそのトレンドは続いている。どう処方率を上げていくかが大きな課題だが、ゾコーバに対する市場、先生方、患者さんからの評判は極めていいと手応えを感じている」と述べた。なお、COVID-19関連製品+インフルエンザファミリーの売上のゾコーバとゾフルーザの内訳は非開示。
承認申請中の新型コロナワクチンの医薬品第二部会での再審議が5月24日に予定されているが、これは起源株に対応したもの。先行他社は既にオミクロン株亜系統(JN.1)の準備に動いており、「24年の冬は厳しいと思うが、なんとか25年の冬から提供させていただけるように鋭意努力を続けていきたい」と述べた。
◎23年度の海外事業(海外子会社/輸出) 売上高は17.4%増の499億円
23年度の海外事業(海外子会社/輸出)の売上高は17.4%増の499億円。欧米で新規抗菌薬セフィデロコル(米国製品名:Fetroja、欧州製品名:Fetcroja)の販売が好調に推移した。24年度の売上高は38億円増の537億円を予想。また、23年度のヴィーブ社からのロイヤリティー収入は、HIVフランチャイズの売上が経口2剤レジメン(ドウベイト等)の力強い成長と長時間作用型(LA)製剤(Cabenuva、Apretude)の急成長により、16.2%増の1958億円となった。24年度は288億円増の2246億円を見込む。
【連結業績(前期比)24年度予想(前期比)】
売上高 4350億8100万円(2.0%増)4550億円(4.6%増)
営業利益 1533億1000万円(2.9%増)1600億円(4.4%増)
税引前利益 1982億8300万円(10.0%減)2000億円(0.9%増)
親会社所有者帰属純利益 1620億3000万円(12.4%減)1630億円(0.6%増)
【国内主要製品売上高(前期実績)24年度予想、億円】
感染症薬 829(1121)912
うちCOVID-19関連製品+インフルエンザファミリー 734(1036)801
スインプロイク 45(34)65
オキシコンチン類 42(44)50
サインバルタ 38(54)33
アシテア 7(5)14
ムルプレタ 1(1)—
ピレスパ 19(25)—
その他 530(512)275
海外子会社/輸出 499(425)537
Shionogi Inc.(米国)179(154)206
Shionogi B.V.(欧州)136(91)144
平安塩野義/C&O 106(120)112
ロイヤリティー収入 2004(1747)2325
うちHIVフランチャイズ 1958(1685)2246