中外製薬の奥田修社長CEOは6月28日の社長懇談会で、4月実施の早期退職優遇措置に伴い、ＭＲ数が1200人から1050人程度に減少するとの見通しを明らかにした。すでに374人が早期退職に応募しており、今週30日が退職日となっている。奥田社長CEOは23年業績予想について、主力品の特許切れやロナプリーブの政府納入分の減少で今期は売上収益の減少を見込みながらも、コロナ関連を除くと国内売上は前年比2.1％増を確保できると表明。業界トップクラスを誇るＭＲの１人当たり生産性も、MR減で４億円超（22年実績は３億7500万円・ミクス編集部試算）が一気に視界に入るなど、「まだ高いところをキープできる」と強気の姿勢を見せた。

◎奥田社長CEO　23年業績予想「国内売上高前年比2.1％増に行くのではないか」

同社は22年通期業績で初の売上１兆円突破を経験、６期連続で過去最高の売上高、営業利益、当期利益を達成した。主な要因は、テセントリク、バビースモ、ポライビー、エブリスディなどの新薬の成長に加えて、ロナプリーブなどコロナ関連治療薬の政府納入などが業績伸長に大きく影響した。一方で、アバスチンやハーセプチンなど過去の業績を支えた製品群の減収も影響しており、23年業績予想は、一転して国内売上収益は前年比17.3％減の5417億円、コア営業利益も前年比8.1％減の4150億円と減収減益予想へと転じている。ただ、奥田社長CEOは、「これまでのところ順調に進捗している。いまのところの予測では、目標（国内売上高前年比2.1％増）に行くのではないか」と手応えを明らかにした。

◎MRは「スペシャリティケアに必要な要員構成で」

こうした中、同社は戦略的な資源配分に向けた構造改革に動き出す。早期退職優遇措置もその一環。今年4月3日から21日の応募期間に社員374人が応募した。この日の社長懇談会で奥田社長CEOは、ＭＲ総数は年内に「1050人程度になると営業部門から報告を受けた」と説明し、150人程度のＭＲの退職を示唆した。また、過去の注力領域である腎領域や骨代謝領域といった、「これまでクリニックなどで多く使用するような薬剤がほぼ無くなって、もはや専門分野や専門病院で取り扱う製品がメインになってきた。営業（ＭＲ体制）については、そういうシフトを敷いている」と奥田社長CEOは強調。さらに、「今後もプライマリケアの製品のパイプラインがないので、そこに戻るという計画は無い。その意味でスペシャリティケアに必要な要員構成で経営していくことになる」と述べ、「ＭＲ一人当たり生産性もまだ高いところをキープできるのではないかと考えている」との見方を示した。

なお、ミクス編集部の調べによると、中外製薬のＭＲ一人当たり生産性は21年実績で3億9900万円（MR数1300人）、22年実績で3億7500万円（ＭＲ数1200人：ロナプリーブ政府納入分を除く）だった。23年業績予想ベースでは、今回示されたＭＲ数1050人で試算すると4億3800万円（ＭＲ数1050人：ロナプリーブ政府納入分を除く）となり、この水準で推移するとＭＲ一人当たり生産性は製薬業界でトップクラスを維持することになる。

◎骨太方針「研究開発力や投資を加速することにつながる」

奥田社長CEOは社長懇談会で、厚労省の有識者検討会報告書や政府の骨太方針2023について自身の見解を披露した。「新薬のイノベーション評価や長期収載品の自己負担の見直し、バイオシミラーの使用促進などに触れている。いわゆる革新的な新薬と長期収載品、ジェネリックとのメリハリをしっかりつけるという方向性を示したもの」と指摘。研究開発型企業にとっては、「新薬にインセンティブを与えることでドラッグロス解消の一助となると考えているし、日本の市場がより魅力的になって、研究開発力や投資を加速することにつながる」と強調した。加えて、「薬価制度が産業構造に影響していることを理解しながら、国民への医薬品を供給するためにどうすべきかを考えると、今回の骨太方針はそこにいく道筋を示しているように思う。これは製薬産業として主張してきたことでもある」とも述べた。