旭化成・小堀社長 ヘルスケア領域へのリソース投入を加速 「BD・M&Aが重要ツール」
公開日時 2021/05/26 04:50
旭化成の小堀秀毅社長は5月25日、経営説明会「“Cs+ for Tomorrow 2021”の進捗」に臨み、グループの経営のリソースをヘルスケア領域に優先投入する方針を明示した。小堀社長は会見で、ヘルスケア領域について、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けているものの、製品のニーズに高まりから成長は継続していると強調。「医薬と医療機器の両輪でのグローバル展開を推進し、旭化成の成長をけん引する第3の柱とする」と意気込んだ。なお、ヘルスケア領域の21年度売上高は、当初計画より300億円増の4000億円を見込んでいる。
◎ヘルスケア領域の年率成長率は13%を確保 海外売上比率の上昇が牽引
同社のヘルスケア領域は2021年までの10年間で年率成長率13%を達成できる見通しだ。この背景には、2011年度の海外売上比率24%を20年度には77%まで拡大したことがある。これにより営業利益も10年で6倍以上に成長している。事業別にみると、急性心筋梗塞用治療機器など心肺蘇生を中心とした既存事業のほか、骨粗鬆症治療薬・テリボンのオートインジェクターの展開、ウイルス除去フィルター・プラノバの販売拡大で成長を確保した。
◎19年に買収したベロキシス社の着実な伸長 21年度の営業利益550億円見込む
19年に買収した米国の製薬企業Veloxis Pharmaceuticals Inc.(ベロキシス社)の腎移植患者向けの免疫抑制剤・Envarsus XRの伸長や、同社との臨床開発や事業開発機能の一本化も寄与した。これにより21年度の営業利益は550億円を見込んでいる。これは当初計画よりも10億円減だが、18年度の実績と比較すると9.6%増にあたる。同社が注力する事業別の過去5年成長率をみても、マテリアルの△8.3%、住宅△0.6%に対して、ヘルスケア領域の貢献度は高く、小堀社長は「成長継続と収益性の両立を実現できた」と強調した。
今後について小堀社長は、財務規律を保ちながら、中期的成長が見込めるヘルスケア領域やDXなどに積極的な投資を行っていく考え。M&Aを含む拡大投資の内訳は、2016年から18年度の累計実績では、マテリアルが大半を占めていたが、19年~21年度累計見通しでは、ヘルスケア領域が半分以上となっており、成長の可能性を見込んでリソースをシフトしていく。
小堀社長は、「ヘルスケア領域の事業拡大においては、ビジネスデベロップメント(BD)やM&Aが重要なツールとなる」と指摘。グローバル展開や、領域を絞り込んだうえでのパイプラインの強化に注力していく考えを示した。