英NICEガイダンス案 前立腺がんワクチン、プロベンジ非推奨
公開日時 2014/10/29 03:50
初の前立腺がん治療ワクチンとして話題となった米Dendreon社のプロベンジ(Provenge、一般名:シプリューセル‐T)が英国立医療技術評価機構(NICE)の第1次ガイダンス案で、NHS(英国民保健サービス)での使用を非推奨とされた。NICEが10月16日に発表した。
Provengeは、白血球除去輸血により患者の白血球(樹状細胞)を採取、同ワクチンを作製するために一定のタンパク(PAP=前立腺酸性フォスファターゼ)を混合させ、その白血球を体内に戻す免疫療法である。適応症は、転移ホルモン抵抗性前立腺がん。
NICEのAndrew Dillon事務総長は、非推奨の理由として、他剤と比較して、▽効果発現までのエビデンスに不明確さが残る、▽既存療法と違って疾患の進行の遅延を示すエビデンスがない、▽現在までに提出されたエビデンスでは、同剤が提供するベネフィットに対してコストが高すぎる――と説明。「シプリューセル‐Tはがん細胞を叩くのに患者自身の免疫系を使うという新規の画期的な治療法」と評価したものの、「独立評価委員会は、同治療法に財政支援することは限りあるNHSの資源の最善の使用法とは言えないと結論付けた」と説明した。
Dendreon社が、白血球除去輸血や同剤 の作製過程のコストなどの情報提供をしているが、NICEは、同剤の投与方法が複雑であることや、英国での治療経験がないことなどから、NHS下で治療を行う場合に追加コストが発生するか不明確であると指摘している。
Dendreon社は、同剤の投与を限定した治療センターで実施することを計画しているが、すべての英国の患者にアクセスを保障することは難しいと指摘。結果的に患者もしくはNHSに(センターまでの)高い旅費を負担させることになると説明した。
同剤のコスト(白血球除去輸血、それに伴う検査費用、ワクチン作製費などを含む)は、1回投与あたり16141.33ポンド(277万6308円、1ポンド=172円、付加価値税除く)である。推奨用量は、約2週間隔で3回投与である。平均薬剤コストは、2.92回投与の47132.68ポンド(810万682円)。このコストは製薬企業の試案で、実際に治療開始によって変更する場合もあるという。製薬企業では、英国では同剤の投与患者数は4600人程度とみている。
なお、スコットランドのNICEに相当するスコットランド医薬品コンソーシウム(SMC)は現在、同剤をこの適応での使用は考慮していない。