AD研究で論議交わす 米専門家
公開日時 2013/12/04 03:50
New York Academy of Scienceの会合が11月6日開催され、アルツハイマー病(AD)の研究者らが最新の研究状況を報告した。
同会合では、ADの根本治療法を求めて、全ゲノム関連解析(GWAS)、炎症カスケード、環境的エピジェネティクスなど各種アプローチが試みられていることが明確になったが、研究者が前へ進めず苦境に陥っていることが浮き彫りにされた。
他の疾患と違い、ADには20500のタンパク質コード遺伝子が存在する。また、ほかに10000の非コードRNAが存在する。研究者はどのように調べる領域を求めればよいのか?
米国立先進トランスレーショナル科学センター(NCATS)のChristopher Austin所長は、「それ(AD解明のカギ)はタウタンパクなのか、アミロイドベータなのか、炎症なのか」と疑問を投げかけ、「我々は、アミロイド説を追究し続けるのか、GWASから生まれる新たな遺伝子的ターゲットを追究するのか。また、タンパクを誤って畳み込むことが原因である関連疾患からの解明のカギは新規治療法を導いてくれるのか?皆さんに尋ねたい」と呼びかけた。2025年までにADの予防と有効な治療法についての有力な仮説を打ち立てるという米国の目標に近づくために今回の会合が開催され、同氏がパネルの議長となった。
米メルク社のDarryle Schoepp上級副社長(神経科学担当)は、アミロイドについて、アミロイドプラークが重要ではないかと根本的な問題を提起した。同氏は、脳でのアミロイドプラークは明らかに悪い作用をするが、問題は、それをどう調整し、治療に使うことができるかだとした。
Prothena CorpのDale Schenk CEO(エラン社からスピンオフ)は、ADの予防と治療は別のものと考えて、予防法、治療法を模索するべきとの考えを示した。同氏は、「遺伝学は我々に予防について教えてくれているが、必ずしも治療について教えていない」とその理由を説明した。予防で作用するものは治療では作用していないという。
テキサス大学のClaudio Soto教授(神経学)は、ADとプリオンの関係について説明した。ADは、タンパクが誤って畳み込まれ、それが蓄積することによって引き起こされる30ほどの疾患に1つだが、やはり誤って畳み込まれた形である感染性のプリオンも脳に障害を与えるので、この点がAD解明のカギになるとの考えを示した。ADを巡り、多くの議論が交わされたが、一層の研究が求められている。
The Pink Sheet 11月25日号