慢性閉塞性肺疾患(COPD)市場は、長いこと、グラクソ・スミスクライン(GSK)の長時間作用型β2刺激薬(LABA)とコルチコステロイド配合剤であるAdvair(サルメテロール・フルチカゾンプロピオン酸)とベーリンガーインゲルハイム/ファイザーの長時間作用型ムスカリン拮抗剤(LAMA)であるSpriva(チオトロピウム)が市場を牽引してきた。Advairは市場で10年、Spirivaは9年脚光を浴びてきた。
だが、COPD市場は、LAMAあるいはLABA単剤および初のLAMAとLABAの定用量配合剤などによる新製品の参入で細分化されそうな気配だ。LAMA/LABA配合剤は結果的には、新たな標準治療となるかも知れない。新薬が保険支払者や患者に受け入れられるには、有効性や安全性で従来品と差別化する必要がある。新薬の臨床データは、現在まで、既存の標準治療よりも有効性ベネフィットや用法用量の便宜性で優位になっている。患者や支払者が治療費に敏感になっている市場で、中程度の有効性の改善では、発売を急ぐには十分ではない。
COPD患者は、治療を受けていてもCOPDが進行するために、COPD市場規模は大きく、アンメットメディカルニーズは高い。最近では、1日1回投与剤に対する1日2回投与剤あるいは定用量配合剤など用法用量と便宜性に注目が集まっている。しかし、これらのみでは、高薬価を支払者に納得させるには十分ではない。
COPDの再燃を減少させるようなエンドポイントや入院を減少させたり、あるいは治療費を削減させることが出来る価値を示せる医薬品企業が競争的市場で優位に立ち、ブロックバスターブランドになるチャンスを持つことが出来る。AdvairもSpirivaも気流を改善させるばかりでなく再燃も減少させる維持療法の適応を持っている。
薬剤給付管理会社(PBM)RegenceRxのSean Karbowics氏は、COPD治療薬の新製品はFEV1(1秒間努力呼気容量)の改善を示すデータを携えて市場に参入してくるが、疾患の増悪や他のアウトカムについてサポートするエビデンスを持っていないと指摘する。
保険支払者は、COPD治療薬のジェネリック医薬品(GE)がないことに懸念を示している。FDAは、呼吸器領域では参入のハードルを高くしており、これは先発企業には明らかなメリットをもたらしている。現在、LABA、LAMAともにCOPD治療薬の主力製品のGEは米国にはない。
市場調査会社Decision Resourceの調べによると、2011年のCOPD治療薬の世界市場規模は90億ドルで、2011年から2021年までに年率4%の伸びで2021年には134億ドルに達すると見込まれる。調査会社IMS Healthによると、米国では2012年にAdvairは、ICS/LABAの市場において、COPDおよび喘息双方の適応で72.3%のシェア(金額で67億9000万ドル)を獲得した。一方、アストラゼネカのSymbicort(ブデゾニド/ホルモテロール)は19.2%のシェアである。Spirivaは、抗コリン薬市場(42億8000万ドル)の64.6%のシェアを持ち、次いで同じベーリンガーのCombivent(イプラトロピウム/アルブテロール)が26%のシェアを占めている。
新製品を見ると、2011年にCOPD治療薬初のホスホジエステラーゼ阻害薬であるフォレストラボラトリーズのDaliresp(rofumilst)が承認された。同剤に加え、2剤のLABAが市場に参入した。2011年にノバルティスのArcaptaNeohaler(インダカテロール)1日1回投与剤が承認され、2012年にはフォレストのTudorza(aclidinium)1日2回投与剤が承認された。
これら3剤の売上は、現在までのところ、控えめな数字だ。ノバルティス、フォレストともに、これらLABAをLAMAとの配合剤にすることを計画し、長期的に考えている。Tudorzaの2012年3月期売上は1080万ドル、Dalirespは7800万ドルだった。Arcaptaの2012年度売上は1億3400万ドルで、2013年第1四半期売上は4800万ドルとなった。これらに比べ、AdvairはCOPDと喘息の適応を持っているが、77億2000万ドル(50億500万ポンド)と比較にならない。
フォレストは、AlmirallとLAMAであるホルモテロールの配合剤を共同開発中で、今年第4四半期には欧米での申請を計画している。すでに良好なフェーズIIIのデータを発表した。ノバルティスは、LAMAであるグリコピロニウムとの配合剤のフェーズIII試験を終了した。米国でも設定を変更した試験を実施中で2014年末までに申請を計画している。
しかし、両剤ともGSKの新規の1日1回投与剤のLABAとICSの配合剤Breo Ellipta(フルチカゾン/vilanterol吸入パウダー)にはかないそうにない。GSKは同剤をTheravanceと共同開発し、次世代Advairと位置づけている。PDUFAデートは今年5月12日だ。また、1日1回投与のvilanterolとLAMAのumeclidinium 配合剤Anoro Ellipta(vilanterol/umeclidinium)を申請済みで、PDUFAデートは12月8日だ。Breoは、4月17日にFDAの肺・アレルギー薬諮問委員会から承認勧告を受けている。
ベーリンガーは、1日1回投与剤のLABA、Striverdi Respimat(olodaterol)をFDAに申請中だ。また、同剤とSprivaの配合剤をフェーズIII試験中である。Striverdiは、1月にFDAの諮問委員会から承認勧告を受けている。
以下は、現在、申請中あるいは開発中のCOPD治療薬一覧である。
企業名、製品名(一般名)、作用機序、開発段階の順。
*ベーリンガーインゲルハイム、Striverdi Respimat(olodaterol)、1日1回LABA、FDA申請中(PDUFAデート非公開)
*同、olodaterol/チオトロピウム、1日1回LABA・LAMA、フェーズIII
*フォレストラボラトリーズ、aclidinium/ホルモテロール、1日2回LABA/LAMA、2013年第4四半期申請予定
*GSK、Breo Ellipta(vilanterol/フルチカゾン)、1日1回LABA/コルチコステロイド、FDA申請中(PDUFAデート5月12日)
*同、Anoro Ellipta(vilanterol/umeclidinium)、1日1回LABA/LAMA、FDA申請中(PDUFAデート12月18日)
*同、umeclidinium、LAMA単剤療法、FDA申請中(2014年アクションデート予定)
*同、GSK961081、二重ムスカリン拮抗β2作動薬(MABA)、フェーズII
*ノバルティス、インダカテロール/グリコピロニウム、1日1回もしくは2回LABA/LAMA、米国でフェーズIII進行中、2014年申請予定
The Pink Sheet 5月6日号