大洋薬品高山工場 9日間の業務停止処分 改めて問われるGEの信頼
公開日時 2010/03/29 04:02
大洋薬品工業の高山工場で製造された承認規格外の医薬品が品質チェックをすり抜けて出荷された問題で岐阜県は3月26日、高山工場に対し同日から4月3日まで9日間の業務停止処分にすると発表した。処分理由は承認内容と異なる医薬品を製造した薬事法違反だが、原料の混合ミスを疑ったにもかかわらず、意図的に正常品のサンプリングにすり替えて出荷判定試験に提出し、ミスの発覚を逃れようしたことが分かっている。国によるジェネリック(GE)の普及が進めらる一方で、まだ品質などへの不信感が医療現場に漂う中での不祥事だけに、大洋薬品のみならず品質を含む信頼確保策、組織管理を再点検し、着実に実施することが求められる。(写真:名古屋市にある大洋薬品本社)
この問題は、H2ブロッカーのガスポートD錠20mgの製造過程で主成分と添加剤の混合ミスより、承認規格より主成分が20%多いものと20%少ないものが2ロット分の約2万8000箱が製造されたというもの。09年9月に自主回収し、健康被害は出ていないという。
その後岐阜県は、月1回ほどのペースで計6回にわたり立入検査を実施。23日に行った行政処分方針に対する大洋薬品側の弁明のあと、▽違反内容▽悪質さの程度▽過失の程度▽被害状況――などを県独自の行政処分基準に基づき点数化し、処分日数を導き出し、25日に処分を通知した。大洋薬品によると、高山工場では自社品587品目、受託268品目を製造している。業務停止になっても製品供給には支障がないとしている。
処分の発表を受け同社は26日、記者会見はせず、文書で「患者様、医療機関の関係者の方々、お取引様、業界関係者はじめ皆様に多大なご迷惑をおかけ致しますことを深くお詫び申し上げます」とのコメントを発表。
その中で、不祥事の原因の社内調査結果のほか、混合ミス防止として保管容器の識別性の改善、第三者による混合時チェック体制、すり替え防止として製造現場でのサンプリングなどの対策を示し、そのほか不正ホットラインの実施など組織管理の見直し、GMPなど教育訓練の強化に取り組むことを表明した。県は対策の実施状況を監視していくとしている。
GE使用促進アクションプログラム(AP)の行政側の旗振り役である厚労省医政局経済課の福本浩樹課長は、本誌に「メーカー、団体には特に品質管理に気をつけて欲しいと言ってきた中で、処分を受ける事態になったことは遺憾」と述べ、再発防止策の効果について報告を求めていく姿勢を示した。
GEメーカー各社はAPに沿って対策を進めてきており、大洋薬品含め独自の品質試験などを行っているところもある。その中で起きた不祥事であり、不信がGE全体に広がることを懸念する声も漏れる。厚労省内にも「各社の努力に水を差す出来事」(医薬食品局幹部)と捉える見方がある。
近年、大手GEメーカーは2ケタまたはそれに近い急成長を続けており、設備など投資の拡大、会社規模も大きくしてきた。大洋薬品が対策の1つに挙げているように、組織管理のあり方も再点検が必要といえそうだ。
業界団体の日本ジェネリック製薬協会(JGA)の澤井弘行会長(沢井製薬会長)は23日、不信の波及を食い止めたいと「会を挙げ信頼の確保に向け努力したい」と表明した。JGAはきょう29日午後、大洋薬品に対する処分を決め、発表する。会として信頼確保に向けてどんな姿勢を示すのかも焦点といえる。