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将来ビジョン研究会 漢方の保険医療上の必要性主張 ICUでの活用や薬剤耐性菌抑制など紹介

公開日時 2025/04/24 04:49
日本東洋医学会と日本漢方生薬製剤協会などでつくる「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」は4月23日、メディア向けのシンポジウムを開き、漢方薬の保険医療上の必要性を訴えた。シンポジウムでは、集中治療室(ICU)での活用や薬剤耐性菌の抑制など漢方の有用性についてエビデンスを基に紹介。研究会の代表世話人を務める東京都健康長寿医療センターの鳥羽研二名誉理事長は「漢方薬も西洋薬も両方とも保険診療で処方できるのは日本だけ。そのメリットが十分に生かされる日本の保険診療の良さを再認識してほしい」と訴えた。

◎入院時の漢方処方 東北大病院・髙山特命教授「点滴や呼吸器と同時に活用で効果発揮」

シンポジウムでは、入院時やがんなど重症例にも処方される漢方薬の役割を臨床研究の内容とともに取り上げた。東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科の髙山真特命教授は、ICUで急性心筋梗塞や心不全、肺血栓症など重篤な心血管系疾患の治療にも使われているとの大規模データベース研究を紹介。「栄養状態の管理が非常に重要。点滴や経管栄養の際に漢方薬を用いることで栄養状態が良くなり、炎症反応も抑えられて早期の回復が見込まれる」と強調した。研究によると、漢方薬が処方された患者の割合は2010年の7.7%から21年には11.5%に増加しているという。髙山特命教授「ICUでは点滴や呼吸器の利用など保険診療で行われるが、それと同時に漢方薬が使われ、効果を発揮するという点が重要なポイントだ」と訴えた。

薬剤耐性菌に対する活用では、補中益気湯の投与でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出抑制や、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の早期陰転化と生存率への貢献が示されていることも紹介した。鳥羽名誉教授は「抗生物質をなるべく使わないなど、様々な努力をして多剤耐性菌の抑制に努めるが並大抵の努力ではない。致死率も高く世界で問題になっているだけに、非常に注目されるべき成績だ」と述べた。

◎都健康長寿医療センター・鳥羽名誉教授「医療用漢方製剤は国民の健康と医療に必要不可欠」

このほか、がん治療やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症に対するエビデンス▽医薬経済面での負担軽減▽ポリファーマシー(多剤内服)対応▽小児診療での活用―などの側面からも漢方の有用性が示されているという。鳥羽名誉教授は「既に数百の画期的な研究がなされ、西洋薬との比較だけではなく、標準治療や良い治療法がない病気に対する効果も研究されている。国民の健康のためにエビデンスの集積がさらに進むことが必要であり、医療用漢方製剤は国民の健康と医療に必要不可欠だ」と重ねて強調した。

◎漢方に対する意識調査 「保険適用されなくなると困る」約8割

また、NPO法人「みんなの漢方」の増田美加理事長は患者の立場から漢方の必要性を訴えた。同法人では23年に不調経験と漢方服用経験がある女性(n=600)、24年に慢性疾患と漢方服用経験がある男女(n=600)を対象に意識調査を実施。保険適用の漢方薬を処方された経験がある人は、23年調査で85.8%、24年調査で81.8%だったと紹介した。さらに、保険適用の漢方薬に対する意識では「健康保険が適用されなくなると困る」と回答したのは23年調査で82.2%、24年調査で77.5%に上った。その理由として費用面での懸念のほか、「医師処方の保険適用薬への安心感」「自分に合う薬剤や飲み合わせを考慮してもらえる期待」などが多かったという。増田理事長は「医師による漢方薬処方はヘルスリテラシー向上のきっかけになる。早期治療や副作用対策にも役立つことから医療費の削減にもつながるものだ」と重要性を訴えた。
 
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