INES「創薬イノベーション再興の会」設立 薬剤費マクロ経済スライド踏まえ新財政フレーム提言へ
公開日時 2025/02/20 04:49

新時代戦略研究所(INES)は2月19日、前回の衆院選挙で落選した自公の前国会議員7人らをメンバーとする「創薬イノベーション再興の会」を設立したと発表した。薬価制度や「インフレ傾向に対応する新たな財政フレーム」にフォーカスを当て、アカデミアや有識者、民間企業で議論を進める。まずは骨太方針2025に向けて取りまとめを行い、その後具体的な制度について提言を行う方針。INESは2021年にマクロ経済スライドを薬剤費に導入することを提案しており、この案をベースに新たな財政フレームの提案に向けて議論を重ねる考え。
創薬イノベーション再興の会は、7人の前国会議員、アカデミアや有識者に加え、民間企業10社程度をコアメンバーとして募る。ディスカッションテーマには、薬価制度のほか、「インフレ傾向に対応する新たな財政フレームの検討」(保険財政とイノベーション評価の整合性の検討)などもテーマに掲げた。INESは21年に薬剤費マクロ経済スライドの導入を提案。財政制度等審議会財政制度分科会でも議論となった。一方で、ミクロな観点が欠けているとして、厚労省や製薬業界からは大きな反発の声もあがり、導入には至らなかった。
INESの朝井淳太代表は、「先生方にも色々ご迷惑をおかけしたし、賛否もあった」と振り返った。そのうえで、「当時とは、経済状況は変わってきたと思う。インフレに振れていくなかで、企業の運営上、物価高に対して大変だという想いも聞いている。結果的にフレームを入れたほうがよかったのではないかという声もいただいている。当時議論したものをベースに、研究会でも揉んでいきながら新たなフレームを考えていきたい」と述べた。
◎INES・梅田理事長「議論したことを実行していく立場に立たれる方ばかり」会設立の大きな原動力
INESの梅田一郎理事長(元ファイザー社長)は、デフレからインフレへと局面が変わるなかで、「物価も賃金も上がっていく中で、医薬品だけがそうではない方向に行くようでは、産業はもたない。もうこれは本当にもう今、待ったなしで大きな改革をしなければならないという時点に来ている」と指摘。「抜本的な議論をしていく、本当に大きなチャンスをもらった。先生方が間違いなくいずれ議員として戻って行かれたときに、厚労行政の中心に立って責任者となっていかれる方だ。議論したことを自ら今度は実行していく立場に立たれる方ばかりであるところが、この会を設立した大きな原動力だ」と語った。
登壇した前議員からは、「社会保障のキャップそのものをどう考えるかもしっかり議論していく必要があるのではないか」、「原価や人件費が上がったものを薬価に反映させる仕組みがない」などの声があがった。マクロ経済スライドをめぐっては、革新的新薬を評価するひずみが長期収載品や後発品に及ぶことも指摘されるところ。「安定確保のために、工場の人手不足が起きる中で供給量を維持するにはコストがかかる。経済安全保障がよくなることが考えづらいなかで、安定供給のコストもしっかり考えていかなければいけない。配分は非常に難しく、一つひとつ見ていくことが大切な課題になってくるのではないか」との意見もあった。
参加したのは、伊佐進一氏、渡嘉敷奈緒美氏、橋本岳氏、丸川珠代氏、三ッ林裕巳氏、山田美樹氏、鷲尾英一郎(前衆)の7人。