中医協総会 薬価削除の明確化、簡素化を了承 薬価削除品目は告示改定1か月前を目安に中医協へ報告も
公開日時 2024/08/08 04:49
中医協総会は8月7日、薬価削除の手続きの明確化、簡素化を了承した。医療上の需要がなくなる等の理由で、製造販売業者が薬価削除を希望した品目について、薬価削除のプロセスを明確化。「過去5年間の平均シェア3%以下」などシェアの低い品目については、官界学会の再度の確認を省略するなど、プロセスの簡素化も図る。関係学会の了承が得られた品目については告示が改定され薬価が削除されることになるが、その「1か月程度前」を目安として、中医協に報告するプロセスを新たに設けることも了承された。
厚労省は、医療上の需要がなくなる等の理由により、製造販売業者が供給の停止及び薬価基準からの削除を希望する場合、②承継、代替新規又はG1撤退に伴い、薬価削除が必要な場合-にわけ、薬価削除のプロセスを明確化した。
◎「過去5年間の平均シェア3%以下」の品目は再度の学会確認を省略
「医療上の需要がなくなるなどの理由で薬価削除を希望する場合」は、製造販売業者から供給停止事前報告書が提出された品目について、厚労省から関係学会に撤退の可否を確認。製販業者からの薬価削除願に基づき、再度厚労省から関係学会に撤退の可否を確認するというプロセスを明確化した。2度目の厚労省から関係学会への確認については、シェアが一定の割合以下の品目については省略し、プロセスを簡素化する。シェアについては、「過去5年間の平均シェア3%以下」を想定する。
その後、中医協への報告を経て、薬価削除品目は、関係告示を改正し、経過措置期間の経過後に薬価基準から削除される。なお、告示改正は毎年3月と11月で、薬価基準削除の経過措置期間は告示改正後の最初の3月末まで。関係告示の改正後、必要があれば 製造販売業者が経過措置期間の延長を申請。申請のあった品目については、中医協へ報告後、告示を改正し、1年間期間を延長するとした。
一方、「承継、代替新規又はG1撤退に伴い薬価削除が必要な場合」については、代替品が存在することから、学会確認は不要として、製販業者からの薬価削除願に基づき、中医協に報告するとしている。
◎診療側・森委員 「企業の売り逃げで供給不安悪化」に懸念も
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「内容的には異論ない。原価の供給不安の解決策の一つとなることを期待する」と述べたうえで、懸念を表明。「企業が薬価削除しやすくなることで、企業が売り逃げをしやすくなり、同一製品を生産している企業に負担がかかって、その結果として供給不安が悪化することもあり得る。薬価削除の対応も関連学会の意見とともに、関係企業の意見もうかがいながら、安定供給への影響を見て、患者さんや現場で対応する薬局・医療機関が困らないよう、しっかりと対応していくことをお願いしたい」と要望した。また薬局や医療機関の在庫が消尽できなければ薬局・医療機関の負担となるとして、「薬局・医療機関の不利益とならないよう、流通している医薬品の最終ロットの使用期限まで経過措置の延長を設けるような対応をお願いしたい」とも訴えた。
◎厚労省・水谷産情課長「医療現場に不利益がないよう、経過措置期間の延長申請活用なども周知徹底」
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「薬価削除プロセスは、製販企業が、対象品目の代替品の増産対応について、事前に代替企業の了承を得ることがまず出発点となっている」と説明。「様々な医療現場に不利益を与えてはいけないので、例えば、薬価削除願を提出するに当たっては、在庫の状況あるいは使用期限などを考慮して、医療機関・薬局が十分対応できる余裕を持って周知を行った上で、薬価削除願を提出すること。また、製薬企業においては、経過措置期間の延長申請の活用も含め、使用期限の残存する医薬品が薬価削除されることにより、医薬品流通当事者が被る不利益等に対して適切に対応すること。こうしたことを今回のプロセスの周知と併せて徹底して周知してまいりたい」と応じた。
薬価削除プロセスをめぐっては、「厚労省の後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書で、「関係学会や製薬企業双方の負担軽減も考慮し、供給停止・薬価削除プロセスについて、少量多品目生産の適正化の観点からプロセスの明確化を図るとともに、一定の条件の下で簡素化するなどの方策について、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議等において検討を行うべき」と明記。医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議で、簡素化プロセスが議論されていた。