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薬価研・石牟禮委員長 中間年改定に加え「薬価改定のあり方」検討進める 「必然的に薬価差生じる仕組み」

公開日時 2024/06/17 04:51
日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会(薬価研)の石牟禮武志委員長(塩義製薬渉外部長)は6月14日、総会後の記者会見で、「中間年改定のあり方とともに、薬価改定のあり方についても検討を進めて参りたい」と強調した。石牟禮委員長は、「必然的に薬価差を生じる仕組みにもかかわらず、機械的に引き下げる、解消していくというやり方自体が本当によいのかどうか」と問題意識を表明。市場実勢価格主義自体については「特に否定はしていない」としたうえで、「薬価改定のあり方を検討する中で、薬価差をどう捉えるのか議論する必要がある」との認識を示した。

◎中間年改定 平均乖離率縮小や物価高、賃上げなど踏まえ「あり方検討を」

25年度にも中間年の薬価改定を控えるが、薬価研の事業計画では、「中間年の薬価改定については、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスや医薬品の安定供給の課題解消に向けた各種取組みが推進されていることに加え、平均乖離率が縮小傾向にある状況に鑑み、実施する環境にはないとの認識のもと、所要の対応を図るとともに、薬価改定のあり方について検討を進める」としている。

中間年改定について石牟禮委員長は、薬価改定が診療報酬改定の一部であることから2年に1度が基本であるとの認識を表明。それに加え、「社会保障給付費の伸び抑制が必要な中で、毎年薬価改定で相当な額を出している。これまでの経緯を含め、薬価差がある以上、薬価改定が一つのツールになり得ることは理解するが、それによって影響も出てきている。物価高に加え、各業種を含めても(医薬品産業の)賃上げ率は製造業の中でも大きくないことの要因は何か。これまでのような形で、中間年改定を実施するのかどうかは、まさにあり方を検討してく必要があると考えている」と述べた。

◎薬価改定で薬価差は解消しない 流改懇の薬価差把握の調査結果に期待も

これに加え、「薬価改定のあり方」について検討を深める考えを表明した。石牟禮委員長は、「市場実勢価格で薬価を付けること自体は、特に否定はしていない」と述べたうえで、薬価差を解消するという現行の薬価改定のあり方に疑問を投げかけた。

石牟禮委員長は、「当該既収載品の薬価改定前の薬価を超えることはできない」との薬価ルールがあることに触れながら、「現実的にも、償還される薬価よりも高く買ってくれることは考えにくい。結局市場実勢価格は薬価よりも安い価格にならざるを得ない。このため、薬価差はどうしても発生するという前提がある」との認識を示した。こうした構造があることから、「薬価改定により、薬価差を縮小することはできても、解消することは構造的に無理だ。改定した瞬間にもう次の薬価差が発生してしまうので、解消するわけでもない」と強調した。

石牟禮委員長は、薬価改定のあり方を検討するうえで、薬価差がどこで発生しているか実態を把握する重要性を指摘。厚労省の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(流改懇)」で、全国の医療機関・薬局の薬価差額や乖離率など取引状況を把握するための新たな調査を実施することが了承されたが、「実態を把握する調査は非常に重要だと思っている。その結果として、薬価改定のあり方も検討できる。薬価差のない仕組みなど色々考えるが、どう考えても無理があるので、丁寧な議論をもう一度できるような調査結果を期待している」と述べた。

◎費用対効果評価 価格調整範囲の拡大「薬価制度を越えて用いることが妥当か検討を」

骨太方針の議論で焦点となっている費用対効果評価についても見方を表明した。現在、類似薬効比較方式で算定される場合は有用性系加算部分が価格調整範囲とされているが、拡大も含めた検討がなされている。石牟禮委員長は、「各国で、追加的有用性が費用と見合っているか検討しているという前提に立てば、それ(有用性系加算)を補正するという位置づけで、何がおかしいのか」と疑問を表明した。

価格調整範囲の拡大については、「非常に緻密な議論をしていただいて決まっている薬価制度を用いて算定した薬価に対して、イノベーションに対する評価自体がすべてなくなってしまう、さらにはインセンティブをも無視してしまい得る」として、「薬価制度の補完として用いるという観点ではやりすぎだと思っている」と述べた。増分費用効果比(ICER)を直接価格調整に用いる仕組みも他にないとして、「ICERのどこまでが確実かということも、さらに議論が必要だ」と指摘。「これまでの歴史も含めて作り上げてきた薬価制度、薬価算定ルールを越えてまで正しいものとして、費用対効果評価の結果を用いることが妥当かは、検討が必要だ」と強調した。

◎24年度薬価制度改革の効果検証 企業の行動変容「継続して定期的に出していく」

24年度薬価制度改革では新薬創出等加算の見直しや迅速導入加算の新設、後発品の企業指標導入などがなされた。石牟禮委員長は、「様々なイノベーション評価と、安定供給確保に向けた施策として、できる限りの対応をしていただいた」と受け止めを語った。薬価制度改革議論に臨む前に行った昨年の会見で、「これまでとは違った風が吹いている」との所感を示したことを振り返り、「風を受けて、ここまで改革、見直しをしていただけたことは大変ありがたいと受け止めている」と述べた。

一方で、24年度診療報酬改定の答申書附帯意見では、薬価制度改革によるドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けた医薬品開発や、医薬品の安定供給に対する影響についての「効果検証」が求められている。石牟禮委員長は、「業界、あるいは各社の行動変容を早めに出していきたい」と意欲を見せた。

日本製薬工業協会(製薬協)は、欧米製薬団体と合同で調査の準備を進めていることを明らかにしているが、これに加え、「各社のトップ、経営層が決算発表などの場で動いているということを見せていただきたい。それを我々の立場として、どうやって表に出していけるかは、これからも考えていきたい」と話した。薬価研としても製薬企業を対象に改定影響を尋ねるアンケート調査を毎回実施していることにも触れ、「一度企業の行動変容を見せたら終わり、ということではなく、継続して定期的に出していくものだと思っている。どういった形で出せるか、早めにお示ししたい」と意欲をみせた。


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