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科研製薬・堀内社長 25年度のクレナフィンクリフ念頭に「新商品の上市を早急に行う」 導入や提携に注力

公開日時 2024/05/17 04:51
科研製薬の堀内裕之代表取締役社長は5月16日の2023年度(24年3月期)決算説明会で、主力の外用爪白癬治療薬・クレナフィンの特許切れが「近づいている」とし、「この減収リスクを補う新商品の上市を早急に行っていく。これが大事」と強調した。同社100%子会社が2月にクレナフィンAGの承認を取得し、発売準備を進めているが、“クレナフィンクリフ”による減収影響の最小化に向け製品導入や販売提携の交渉をより積極的に行っていく考え。同社によると、クレナフィンの用途特許は25年2月まで。AGを除く通常の後発品が早ければ25年6月に参入してくる可能性があり、対策を急ぐ。

クレナフィンの23年度売上は前年度比4.8%減の171億円。24年度計画は172億円としている。23年度の減収は、薬価改定影響や、競合品の外用薬ルコナックや内服薬ネイリンとの競争激化によるもの。それでもクレナフィンは同社の連結売上の23~24%を占める主力品のひとつで、クレナフィンクリフ対策は最重要の経営課題となっている。

同社は、この対策のひとつとして、エーザイからめまい・平衡障害治療薬・メリスロンと筋緊張改善剤・ミオナールの2製品の国内権利を獲得した。両剤の販売権は25年3月末を目途に移管し、その後、製造販売承認を承継する。ただ、科研製薬の鈴土雅取締役は、「(両剤だけで)減収をカバーできる状況ではない。更なる積み上げを図っている状況」と述べ、引き続き製品の承継や販売提携、後期開発品の導入などにスピード感を持って取り組む姿勢をみせた。なお、クレナフィンAGの発売時期は「検討中」(松浦真洋取締役)としている。

◎23年度業績は減収増益 アルツが5.7%増収、売上トップ製品に

23年度の連結業績は、売上高は1.3%減の720億4400万円、営業利益は18.9%増の95億1300万円、親会社帰属純利益は47.5%増の80億2500万円――の減収増益だった。主な減収理由は医薬品の海外売上の減少となる。大幅増益は、前年度に2つの開発品の導入一時金65億円を計上したことの反動や、同じく前年度に連結子会社アーサム社の開発品「ART-648」の水疱性類天疱瘡を対象とした開発中止に伴う減損損失15億円を計上したことの反動が、主な要因となる。

国内の主要製品の売上は、クレナフィンは4.8%減の171億1600万円、関節機能改善剤・アルツは5.7%増の180億4000万円、癒着防止吸収性バリア・セプラフィルムは10.2%減の69億9500万円、原発性腋窩多汗症治療薬・エクロックは44.1%増の18億1200万円――だった。アルツは、競合品スベニールの終売による需要を取り込み増収とし、同社の売上トップ製品となった。エクロックは23年6月に投入した直接腋窩に薬剤を塗布できる新容器「ツイストボトル」の浸透や疾患認知の広がりもあって伸長した。

後発品売上は2.6%減の79億9200万円で、薬価改定が影響した。

◎24年度は増収減益予想 開発パイプラインの進展で試験費用増加

24年度(25年3月期)連結業績予想は、売上高は4.2%増の751億円、営業利益は22.2%減の74億円、親会社帰属純利益は30.2%減の56億円とした。アルツやエクロックなどの伸長により増収となる見込みの一方、開発パイプラインの進展による試験費等の増加が見込まれるとして2ケタ減益と予想した。同社は現在、後期開発品として、自社品で難治性脈管奇形を対象疾患とするKP-001(旧開発コード:ART-001)と、導入品でアタマジラミ症を対象疾患とするKARが、それぞれ国内第3相試験の段階にある。

◎クレナフィンは前年並みの計画 日本臨床皮膚科医会の調査結果で「より多くの治療介入進む」

国内主要製品の売上計画は、クレナフィンは0.5%増の172億円、アルツは5.3%増の190億円、セプラフィルムは2.8%減の68億円――で、エクロックは21.4%増の22億円を目指す。

クレナフィンは4月に2.7%の薬価引下げを受けたほか、競合激化の状況も変わらない。しかし、日本臨床皮膚科医会が研究主体で科研製薬が費用負担した、足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査「Foot Check 2023」の調査結果を受けて、「より多くの爪白癬患者さんへの治療介入が進む」(堀内社長)と予想し、前年並みの売上計画を立てた。

◎アルツの売上予想に選定療養の影響含めず

アルツは6.0%の薬価引下げを受けたが、引き続きスベニール終売による需要を取り込めるとして増収と予想した。なお、アルツは10月実施の長期収載品の選定療養の対象となっているものの、今回の予想に選定療養の影響は含めなかった。アルツは現在、後発品の影響が極めて限定的で、撤退した後発品もあり、現時点では選定療養の影響が見えづらいためとしている。

エクロックは引き続き疾患啓発に取り組むほか、ツイストボトルの普及を図る。

◎後発品は1.4%増収予想 選定療養で需要高まる製品ある

後発品は1.4%増の81億円と予想した。長期収載品の選定療養の影響で需要が高まる製品もあるとみており、堀内社長は「安定供給に取り組み、通常のディテールも強化する」と述べた。

【23年度連結業績 (前年同期比) 24年度予想(前年同期比)】
売上高720億4400万円(1.3%減) 751億円(4.2%増)
営業利益95億1300万円(18.9%増) 74億円(22.2%減)
親会社帰属純利益80億2500万円(47.5%増) 56億円(30.2%減)

【23年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 24年度予想、億円】
クレナフィン 171.16(179.85) 172
アルツ 180.40(170.62) 190
セプラフィルム 69.95(77.90) 68
フィブラスト 26.26(27.59) 26
エクロック 18.12(12.57) 22
リグロス 8.98(8.91) 9
ヘルニコア 3.82(3.92) 4
後発医薬品計 79.92(82.01) 81
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