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タケダOB・Active-T 「医療データの課題と展望」で座談会開催 医療従事者もデータ活用で教育が必要

公開日時 2024/03/07 04:50
武田薬品OBを中心とするビジネスコミュニティ「Active-T」は3月2日、武田薬品の京都薬用植物園で開催した定期総会で、「医療データの課題や展望」をテーマにタケダOBらによる座談会を行った。登壇したメンバーからは、「医療DXを進めたくてもデータソースに課題が多い」、「医療データの利活用を進めるためには、実例を積み重ねることで広く意義を知ってもらうことが必要」、「データを個人が管理したり、個人に帰属したりするような仕組みづくりが急務」などの指摘が相次いだ。

座談会は、タケダOBで現在は日本ベーリンガーインゲルハイムに勤める黒澤修一氏をファシリテーターに意見を交わした。登壇者は京都薬科大学臨床薬剤疫学分野の村木優一教授、医用工学研究所の北岡義国社長、サージラボの中村浩己代表、ノバルティスファーマの廣地克典氏―の4人。中村氏と廣地氏はタケダOBだ。

医療データプラットフォームの開発や提供を手掛ける北岡氏は、「電子カルテは約10社のメーカーが市場の9割を占めているが、形式がバラバラで、後々に分析しやすいような状況ではないというのが前提にある」と指摘した。これに対し廣地氏は、「製薬企業としてデータを活用する側としても課題を感じる」と同意。抗がん剤の開発で重要な全生存期間のデータは、患者の転院などで把握できないケースが多いと説明したほか、小児がんのレジストリを作ろうとした際に、データの形式がGCPに耐えることができなかったと振り返った。

中村氏は、「カルテの規格を日本全国で統一し、1患者につき1カルテという状況が実現すれば、母子手帳や学校の検診などのデータも含め、医療データを1人の患者の人生のなかで積み重ねていくことができる」と強調。データの利活用を進めるために、こうしたデータベースの意義を広く知ってもらうことが重要だと投げかけた。廣地氏も「希少疾患のレジストリ構築など、少しずつ実例を作っていく必要がある」と同調した。

カルテの一元化をめぐっては北岡氏が、カルテを個人が管理する中国を例示し、「こうした事例を発想の原点として進めていくことできると一元化は進むのではないか」と指摘。中村氏も、「情報は患者のもので、患者自身に帰属すべきだと思う。それをクラウド上に保存して、どの医療機関からもアクセスできる形が理想だ。実現すれば、医師の紹介状などの書類作成は減り、薬の重複やアレルギー対応などの問題も起きなくなる」と続けた。

一方、村木教授は、「医療従事者も、どの医療行為がどのように電子化されているのか理解していない部分が問題だ。事務に任せっぱなしで仕事していると、その後集まったデータを有効活用できないため、医療従事者にもデータ活用の教育が必要だ」と強調した。実際に薬学部生を対象に、匿名加工情報を用いた授業に取り組んでいることなどを紹介した。

◎疫学データの脆弱性 関係者で克服を

ファシリテーターの黒澤氏が「タケダOBで今は立場が異なる私たちだからできることはあるか」と問うと、中村氏は、様々な立場が揃う病院外の関係者も含め、「患者のためのチーム医療を作ることに踏み出せるといい」と切り出した。中村氏は、「日本は疫学データが非常に弱い。特に希少疾病領域では正確な患者数が分からないケースもあり、これがドラッグ・ラグやジャパンパッシングなどの問題の要因の1つになっているのではないか。製薬企業は患者がどれくらいいるのか把握、理解し、それに応えることを考えないといけない。そのためには、病院の外のパートナーも含めたチーム医療が必要ではないか」と訴えた。村木教授も、「Active-Tで未来のためにいいことをやっていけるネットワークを作りたい」と期待を寄せた。

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