第一三共・奥澤社長 バイオ、グローバル、DXを人財育成の強化領域に 社員から「手上げ」で再配置も
公開日時 2024/03/04 04:52
第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長COOは2月29日のESG説明会で、ビジネス環境の急激な変化への対応として、①バイオ人財、②グローバル人財、③DX人財-といった専門人財の育成に注力する方針を明らかにした。これら強化領域に対しては、社員の「手上げ」や会社指示による再配置を開始したところ。奥澤社長COOは、「社長就任1年目の23年度は、“社長キャラバン”として日本の全拠点(営業・研究開発・生産等)を直接訪問し、9000人の社員と経営方針や人事施策のダイアログを計31回実施した」と報告。「社員一人ひとりが自分自身のキャリアを自らの意思で創るという、非常に動的なキャリアデベロップメントの機会がここにあるという捉え方をしてくれているとの印象を持った」と語った。
◎スキルや経験を生かし、リスキリングしながら成長分野のプロフェッショナル人財を育成
奥澤社長COOは専門人財の強化領域にあげた「バイオ人財」について、中高分子のモダリティに関する知識、取り扱い技能を有する専門人材と説明。「グローバル人財」については、英語、異文化対応、国際的視野といったグローバルスキルに加えて、業務経験、専門性があり、勤務地に関係なく、グローバル業務を遂行できる専門人材と位置付けた。「DX人財」については、第一三共グループの各バリューチェーンにおけるビジネス要件と、デジタル、データの双方を理解し、変革マインドを持った専門人財というように定義しているとした。奥澤社長COOは、「社員1人1人の持つスキル、能力の可能性を信じている。第一三共グループの中で培ってきたスキルや経験を生かし、リスキリングしながら、新たな成長分野におけるプロフェッショナル人財を育成したい」と意気込んだ。
◎プロモーション体制の変化などで「より生産性の高い効率的な組織変革が求められる」
奥澤社長COOは同社を取り巻くビジネス環境の急激な変化について、「グローバル開発プロジェクトの増加や、今後数年間に独占販売期間満了を迎える既存の主力製品から、エンハーツを中心としたオンコロジー領域への事業のシフト、それに付随するプロモーション体制の変化等により、より生産性の高い効率的な組織へのトランスフォーメーションが求められている」と表現した。その上で、「社員の変化や成長を(会社が)推奨、支援し、グループ内の人財の流動性を高め、新たなチャレンジの機会を提供する取り組みを進めている。これに伴い、バイオ人財、グローバル人財、DX人財といった特に強化すべくすべき専門人財を定め、学ぶ風土、育てる風土を醸成することで、これらの育成を進めていく」と強調した。
◎最重要資本は人的資本 競争優位性を生み出す源泉として持続的に投資拡充
同社は第5期中期経営計画で、2025年度を目標として「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業の実現」を掲げている。一方で経営戦略と連動した人財戦略上の目指すべき姿として、①イノベーションの創出、②社員のエンゲージメント向上、③生産性の向上-の3つを重要なアウトカムと位置付けている。奥澤社長COOは、「(第一三共の)ミッションを果たす上では、サイエンス&テクノロジーやバリューチェーンの継続的な強化が不可欠であり、その鍵となるのは人である。当社の最重要資本は人的資本であり、競争優位性を生み出す源泉として持続的に投資拡充をしなくてはならない」と強調した。
◎25年度からグローバル共通の等級制度や市場競争力のある報酬制度を導入
このうち先進的グローバル創薬企業の実現について奥澤社長COOは、「2024年度から成果創出人財育成に主眼を置いた評価制度を開始。2025年度よりグローバル共通の等級制度や市場競争力のある報酬制度を導入する予定」と明かした。すでに、コーチングの鍵を握るマネジメント職約600名に対し、効果的なコーチング&フィードバックのためのグローバル共通プログラムを実施したところ。さらに、24年4月からDevelop & Growを促進するプラットフォームとして「DS Academy」を設立し、初代校長として常務執行役員の小川晃司CFOを任命したとした。
◎社長キャラバン「強化領域で活躍したいと目をキラキラさせた若い社員が沢山いた」
奥澤社長COOは社員9000人を行った“社長キャラバン”を振り返り、「人によって、自分はそういった仕事に就けるんだろうか、どんなスキルを身につけたら良いのだろうか、などファーストインプレッションとしての不安のような戸惑いを感じることがあった」と述べながらも、「ぜひ自分もそういった強化領域で活躍したいと目をキラキラさせた若い社員が沢山いた。若い世代にとって、自分自身のキャリアを自らの意思で創っていくという、非常に動的なキャリアデベロップメントの機会と捉えてくれているとの印象を持った」と語った。